全2497文字
PR

 ソフトバンクグループ(SBG)の傘下企業が、利用する地図サービスを米Mapbox(マップボックス)のものに切り替え始めている。マップボックスはソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が2017年に出資した地図作製サービス会社で、ソフトバンクと日本で合弁会社を設立した。

 合弁会社の設立は2020年3月で、両社は2020年5月20日にその事実を発表した。合弁会社設立の目的を「ソフトバンクグループとのパートナーシップを加速し、日本市場にマップボックスのサービスを根付かせるため」と、マップボックス・ジャパンのベン・トラスチェロ(Ben Truscello)チーフビジネスオフィサーは話す。マップボックスは2010年創業。2019年3月には日本市場への本格参入を見越して、地図情報大手ゼンリンから地図データ提供を受けることを発表していた。

マップボックスの地図情報サービスの開発プラットフォーム。3次元など多彩な表現が可能だ
[画像のクリックで拡大表示]
マップボックスの地図情報サービスの開発プラットフォーム。3次元など多彩な表現が可能だ
出所:Mapbox

 「ソフトバンクグループには地図表示アプリであるヤフーマップや、ソフトバンク子会社で自動運転サービスの開発を手がけるBOLDLY(SBドライブから社名変更)、ソフトバンクが手がけるIoT(インターネット・オブ・シングズ)サービスなど、地図情報サービスのユースケースで考えられるものはほとんどそろっている。グループのエコシステムの中で最先端の地図や位置情報を使ったユースケースを作っていきたい」とマップボックス・ジャパンの高田徹チーフストラテジーオフィサーは意気込む。

SVFの出資先をグループの資産を活用して成長させる

 2019年10月にはヤフーマップの地図表示システムをマップボックス製に変更した。ソフトバンクのグループ会社が提供するスマホ決済「Paypay(ペイペイ)」の地図情報もグーグルマップを使っていたが、2020年6月4日にマップボックスとの連携開始を発表した。

 高田氏は2008年にヤフー(現・Zホールディングス)に入社し、現在はZホールディングスの投資会社であるZコーポレーションの最高執行責任者(COO)と、ソフトバンクの事業開発統括技術投資戦略本部長も兼務している。

 事業開発統括という部署は3~4年後を見据えてAI(人工知能)やIoTなどを活用した新しい事業の開発を手がける部署だ。そのなかでも「技術投資戦略本部はSVFのポートフォリオ企業をグループ全体の資産を活用して成長させることをミッションの1つとしている」(高田氏)。

 「突然やってきたコロナの谷にユニコーンがどんどん落ちている。SVFの投資先88社のうち15社ぐらいは倒産するのではないか」。SBGの孫正義会長兼社長は2020年5月の決算発表会でこう発言した。2020年3月期のSBGの決算は1兆3646億円の営業赤字となった。2019年3月期に1兆2566億円の黒字だったファンド事業の営業損益が、2020年3月期に1兆9313億円の赤字に転落したことが「経営の足を引っ張った」(孫社長)。

 SVFの投資先が苦戦する中でソフトバンクがマップボックスと合弁会社を設立したのは、マップボックスの経営支援が目的なのだろうか。それを高田氏に尋ねると「日本で合弁会社を作る理由はソフトバンクにとって戦略的な意味があるからだ。結果的にマップボックスの米本社の経営強化につながればいいと思うが、経営支援が直接の目的ではない」と述べた。