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2021年度早期の納入開始は絶望的

 米国拠点では、2015年11月に初飛行に成功した飛行試験機1号機を筆頭に、4機の飛行試験機を使って飛行試験を続けてきた(図3)。しかし2016年になってTC取得には機体に大幅な設計変更が必要だと判明。これが2017年の5回目の納入延期につながった。この時点では新たな納入時期を2020年半ばとしていた。

図3 2015年11月11日に初飛行した1号機 (当時はMRJ)
図3 2015年11月11日に初飛行した1号機 (当時はMRJ)
(写真:早川俊昭)
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 設計変更にあたって、機体の前後2カ所にある格納スペースのどちらに各装備品を格納するのがリスク回避の観点から最適かを再検討した。これに伴い、2万3000本以上ある電気配線も全面的に見直すことになった。装備品の配置を見直した後、要求仕様から図面を作製し、実際に機体を製造するというプロセスをやり直したことになる。実はTCを取得するには、「なぜ、その配線がそこにあるのか」を論理的に説明する必要があり、従来の設計の進め方を根本から見直す必要があったようだ。

 この設計変更は当初、2017年内に完了するとアナウンスしていたが、結局3年かけて設計変更を実施し、ようやく完成したのが10号機である(図4)。前述の装備品の配置や配線の設計変更だけでなく、機体のシステムや部品、機能について見直した結果、900件以上の設計変更を余儀なくされたという。

図4 最終組み立て中の飛行試験機10号機
図4 最終組み立て中の飛行試験機10号機
(出所:三菱航空機)
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 三菱航空機がスペースジェットの開発を継続できるかの第1の関門は、いつフェリーフライトを実施して、米国で10号機の飛行試験を開始できるかだ。現在、米国拠点にある飛行試験機はいずれも旧設計であり、TC取得に向けて10号機でしか実施できない飛行試験は少なくない。飛行試験の結果を受け、大なり小なりの設計変更が必要になる可能性も残っている。

 新型コロナ以前に、10号機の完成が遅れた段階で2020年半ばの初号機納入は絶望的になっていた。そもそも、TC取得後すぐに初号機を納入できるわけではない。顧客である航空会社の意向にも影響を受けるが、一般にはTC取得後、初号機納入まで半年は掛かるといわれている。「2021年度以降」が実質的に2022年や2023年になるのは、ほぼ確実な情勢だ。