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開発・納入遅れで生産計画にもめどが立たず

 納入時期の遅れは生産計画にも影響する。三菱重工の量産工場ではこれまで、5機の飛行試験機(1〜4号機と10号機)を出荷している。設計変更に対応した最終飛行試験機の2機目である飛行試験機7号機(JA27MJ)も完成しており、同11号機も組み立ての最終段階にある。7号機も11号機も顧客に引き渡せる仕様で製造していたが、10号機の試験結果によっては手直しが必要になるかもしれない。

 これら以外に、地上試験機を2機(5号機と6号機)製造したほか、工場内では90席クラスの旧MRJ90(SpaceJet M90)の胴体を短縮した70席クラスの旧MRJ70の試験機として製造していた機体(8号機と9号機、現在は製造中断中)がある(図5)。顧客に引き渡す機体になる可能性が高い12号機以降については最終組み立てには至っていないが、部分的な製造は開始しているという。

図5 最終組み立て工場(2017年)
図5 最終組み立て工場(2017年)
構造ラインと艤装(ぎそう)ラインの2つに分かれており、それぞれ同時に6機の機体に対して作業できる。本来、艤装ラインでは塗装前の機体に対して作業するが、5号機には量産初号機の納入先である全日本空輸(ANA)のカラーリングが施してあった。(出所:三菱航空機)
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 このように、工場での製造は完全に止まっているわけではないが、納入時期が不透明な中で開発費が削減される状況では生産計画も当然見直さざるを得ない。開発予算はTC取得に優先的に割り振られるため、量産機の生産準備に対する先行投資は限られる。

 量産規模については当初、「量産開始後2〜3年で月産3〜5機にしたい」(三菱重工 MRJ事業部長の高口宙之氏。2020年2月に6回目の納入延期を公表する前、2017年7月の発言)としていた。この規模での生産も現状の準備状況では難しいだろう。月産5機でも年産60機。三菱重工がもくろむ「20年で5000機」という市場規模を考えると十分な生産能力とはいえない(図6)。さらなる生産能力増強に取り組むのはずっと先の話になるだろう。

図6 100席クラス以下のジェット旅客機の市場
図6 100席クラス以下のジェット旅客機の市場
今後20年間で5000機以上の需要が見込まれており、その約4割が北米である(a)。また、機体寿命を約20年とする代替需要は安定して推移する(b)。(三菱航空機の資料を基に日経ものづくりが作成)
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