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 日本初の国産ジェット旅客機として開発が進められている「三菱スペースジェット」(以下スペースジェット、旧MRJ)が新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の流行拡大でさらなる苦境に立たされている。型式証明(Type Certificate=TC)取得に向けた飛行試験の一時中断を余儀なくされたのに加えて、航空機市場の先行きの不透明さが増している。

 開発を進めるのは三菱航空機(愛知県・豊山町)。その親会社であり機体の製造を担う三菱重工業は、2020年5月11日に実施した2019年度(2020年3月期)の決算発表会の場で、スペースジェットの開発投資の半減や拠点の整理を含むリストラ、開発・生産スケジュールの大幅な見直しを明らかにした。これを受け三菱航空機も同年6月15日、開発責任者の交代など体制の変更を明らかにした。

ようやく完成した試験機が渡米できず

 スペースジェットはかねて開発の遅れから納入時期の延期が繰り返されてきた。6回目の延期を発表した2020年2月の会見では納入時期の明言を回避し、「2021年度以降」と曖昧にした。設計変更に対応した「最終的な飛行試験機」(三菱航空機)と位置付ける10号機を米国に移送(フェリーフライト)するタイミングで具体的な日程を明らかにできるとし、その時期を2020年春としていた(図1、2)。

図1 「スペースジェットM90」の飛行試験機10号機
図1 「スペースジェットM90」の飛行試験機10号機
2020年3月18日に国内で初飛行に成功した。(出所:三菱航空機)
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図2 三菱重工業取締役社長の泉澤清次氏
図2 三菱重工業取締役社長の泉澤清次氏
2020年2月6日、三菱重工業の2019年度第3四半期決算説明会において「スぺ—ジェット」の6回目の延期を明らかにした。(出所:日経ものづくり)
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 そこに新型コロナである。現在開発中の「SpaceJet M90」のTC取得に向けた飛行試験の中断に加え、顧客であるエアライン各社の業績悪化が機体販売を直撃するのは明らか。三菱重工は新型コロナの影響で他事業の収益も大きく悪化しており、2020年度の事業利益をゼロ円と予想する。スペースジェットへの投資削減はやむを得ない状況だ。

 最終の飛行試験機10号機自体は完成し、2020年3月18日に国内で初飛行に成功している。だが新型コロナの影響で、TC取得のための本格的な飛行試験を実施する米国へのフェリーフライトの時期は未定のままだ。米国拠点では現在、飛行試験そのものを一時中断しており、TC取得に向けた作業がほとんど進んでいない。