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 政府の緊急事態宣言が解除され、経済活動が徐々に再開しつつある。それでもビフォアコロナのような運営は難しい事業が多く存在する。その筆頭格が劇場やライブハウスなどの興行ビジネスだ。

 公共劇場の団体である全国公立文化施設協会が2020年5月に公表した「劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」では「前後左右を空けた席配置、または距離を置くことと同等の効果を有する措置」を推奨しており、事業者が以前と同じような売り上げを確保するのは難しい状態だ。

 一部の自治体は劇場やライブハウスを対象に公演のオンライン配信を支援する取り組みも始めた。佐賀県は2020年7月から2021年2月までリアルとオンラインを融合した文化芸術祭「LiveS Beyond」を開催し、出演者に対しコンテンツ制作経費の一部を助成する。新宿区ではオンライン配信動画を制作する区内のライブハウスや劇場に対し、50万円を上限に経費を助成する。制作した動画は新宿区のユーチューブチャンネルで無料配信され、事業者も自由に再利用できる。

 こうした中、公演のオンライン化に力を入れる動きが進んでいる。2020年6月1日から7日まで、東京・下北沢の本多劇場で完全無観客の芝居「DISTANCE」が公演された。スタッフはフェースシールド着用などで感染対策を実施したうえで撮影し、イープラスのサービス「Streaming+」を活用して有料配信した。

「DISTANCE」の配信風景
「DISTANCE」の配信風景
(写真:和田咲子)
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 DISTANCE公演で注目すべきは生配信で顧客を限定したにもかかわらず黒字化に成功した点だ。劇場使用料や制作スタッフ・演者へのギャラを支払いつつも利益を出せたことは、新常態への適応を迫られる全国の劇場や劇団にとって希望となりそうだ。関係者にオンライン配信の注意点やコツを聞いた。

あえてリアルタイム配信に限定

 公演制作責任者であるオフィス鹿の高橋戦車氏によると、劇場を再開できたことがDISTANCE公演において最も意義ある点だったという。コロナ禍において演劇配信に取り組む団体は多いが、高橋氏は「劇場が再開できなければ、我々が本来帰りたい場所がなくなってしまう。DISTANCEで劇場を再開できたのは大きい」と話す。