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 「自動車の鍵を再定義する」――。米Apple(アップル)は2020年6月22日(現地時間)、同社の開発者向けイベント「WWDC20」の基調講演でこう宣言し、iPhoneの近接無線規格「NFC」を利用して自動車の鍵にする新機能「CarKey」を発表した。ドイツBMWが新型「5シリーズ」でいち早く採用する。スマホを鍵にする機能は、以前から自動車業界で提案されてきた。10億台前後が稼働中とされるiPhoneが対応することで、普及に弾みが付きそうだ。もっともアップルは次世代仕様である「UWB(超広帯域無線)」に対応したデジタルキーを本命視しているようだ。クルマの防犯対策などへの活用が見込めるからだ。

アップルは一般的な自動車の鍵をスライドに表示して、新しいデジタルキーを生み出す意気込みを語った
アップルは一般的な自動車の鍵をスライドに表示して、新しいデジタルキーを生み出す意気込みを語った
(画像:WWDC20での基調講演をキャプチャーしたもの)
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 アップルはWWDC20の基調講演で突如、CarKeyを発表した。駐車場に停めてあるBMWの新しい5シリーズをiPhoneで解錠して中に乗り込み、始動させるデモを見せた。利用するのはNFCである。NFCのセキュアエレメント内に鍵データを格納し、「Apple Wallet」を通じてアクセスし、iPhoneを自動車の扉そばにかざしてデジタルキーとして利用する。デジタルキーのセットアップは、BMWのアプリを通じて行う。解錠して運転席に座り、iPhoneをスマホ用トレーに載せて、運転席のスタートボタンを押せば始動する。

 クルマの所有者は、メッセージアプリ「Message」を通じて友人や家族間で鍵データを受け渡すことも可能だ。BMWによれば最大5人とデジタルキーを共有できるという。その際、若いドライバーに対して、最高速度の制限やラジオの音量などの制限をかけられる。

 CarKeyは、iPhoneの現行OS「iOS13」と、20年秋に正式版をリリース予定の次期OS「iOS14」で対応する。基調講演で言及がなかったが、BMWの資料によると、「Apple Watch Series 5」(watchOS 6.2.8)でも新しいデジタルキーを利用できるとしている。新しいデジタルキーは、5シリーズだけでなく、8シリーズやX5シリーズなど、20年7月以降に製造されるBMWの10車種以上で順次対応するという。

アップルの「CarKey」にいち早く対応するBMWの新しい5シリーズ
アップルの「CarKey」にいち早く対応するBMWの新しい5シリーズ
(画像:WWDC20での基調講演をキャプチャーしたもの)
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iPhoneを扉に近づけて鍵を解錠する様子
iPhoneを扉に近づけて鍵を解錠する様子
(画像:WWDC20での基調講演をキャプチャーしたもの)
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デジタルキーを友人や家族に渡そうとしている場面
デジタルキーを友人や家族に渡そうとしている場面
(画像:WWDC20での基調講演をキャプチャーしたもの)
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自動車業界で標準化が進む

 スマホをデジタルキーに活用する取り組みは以前から自動車業界で検討されてきた。仕様策定を進めているのが業界団体「CCC(Car Connectivity Consortium)」だ。アップルとBMWはCCCの主要メンバーで、同団体の主要な役職である「Director」をそれぞれ務めている。アップルとBMWのほかに、自動車メーカーでは米ゼネラル・モーターズ(GM)とホンダ、韓国・現代自動車、ドイツ・フォルクスワーゲンが、電機メーカーでは韓国LG電子とパナソニック、韓国サムスン電子がDirectorを務める。こうした主要メンバーは、スマホを使ったデジタルキー導入に前向きだ。