全1406文字
PR

 「クルマの交通量が少ない過疎地では、高精度3D(3次元)マップが作成されるまでに時間がかかる。だが、一方で過疎地は高齢者が多く、自動運転に対するニーズが高い。高精度3Dマップがなくても交差点を認識できる技術が求められている」。米NVIDIA(エヌビディア)の日本法人でシニアソリューションアーキテクトを務める室河徹氏は、同社が人工知能(AI)で交差点を認識する技術を開発した背景をこう説明する。

 同氏によれば、自動運転車が交差点を走行するには、対象とする交差点がどこから入ってどこから出られるのか、他の車両がどこから入ってくる可能性があるのか、どこに横断歩道があり、どこで車両を停止させなければならないのか、といった交差点の構造を認識できなければならない。そのために、これまで主流となっていたのが、交差点とその周辺の高精度3Dマップを用いる方法である。

 ただ、高精度3Dマップをそうした用途に用いるためには、交差点の進入線/脱出線、車線の区分線(車線境界線や車道外側線など)、信号機や標識の配置、各方向の車線数など、交差点ごとに構造的な特徴を手動でラベリングする必要があった。対象とする交差点の数だけ、そのための情報収集やラベリング作業が必要となるため、手間やコストがかかり、世界中のあらゆる交差点に対応することは難しかった。また、道路工事など交差点に一時的な変化が発生した場合など、それを反映させて後で戻すという煩雑な作業が求められるという課題もあった。

 そこで今回、エヌビディアが開発したのは、走りながらリアルタイムで交差点の構造を認識する専用のニューラルネットワーク(NN)である。室河氏によれば、同社が北米、欧州、中国、日本など各地で収集したさまざまな交差点の画像にラベルを付けて学習させたNNである。学習用の画像には、どこに交差点の入り口と出口があるかをラベリングする程度であり、高精度3Dマップを作成する場合ほどラベリング作業に手間や時間がかからないという。

 同NNの最大の特徴は、交差点を点と線の集合として単純化して認識する点だ(図1)。自車両の交差点への進入停止線を赤色、自車両の交差点からの脱出線、他車両の交差点への進入停止線を黄色という具合に、それぞれ色付きの点と線で認識し、自車両は赤色から緑色に向かった複数の経路を取れることを把握できる。

図1 新開発のNNによる交差点構造の認識の一例
図1 新開発のNNによる交差点構造の認識の一例
赤色の点と線の部分から交差点に進入し、緑色の点と線の部分で交差点からの脱出が可能であることを認識している。黄色の点と線は、他の車両が交差点に進入できる部分を示している。(出所:NVIDIA)
[画像のクリックで拡大表示]