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 新型コロナウイルス対策として多くの企業がテレワークに取り組むなかで、リモート・デスクトップ・サービスへの注目度が高まっている。社内にあるパソコンと自宅などにある社外パソコンをインターネット経由で接続したうえで、社外パソコンから遠隔で社内パソコンを操作できるようにするサービスである。

 主なサービスには韓国RSUPPORT(アールサポート)の「RemoteView」、NTTテクノクロスの「マジックコネクト」、米Splashtop(スプラッシュトップ)の「Splashtop Business」、ドイツのTeamViewer(チームビューワー)の「TeamViewer」などがある。料金体系は各社で異なるが、1ユーザーの月額利用料金は1000円前後からである。

 注目が集まっている理由は2020年2月以降の新型コロナ禍にある。「在宅勤務社員が社内のパソコンやシステムにアクセスできるようにテレワーク環境を緊急に整えなければならない」という課題に直面する企業が少なくなかった。

 NTTテクノクロスによると、2019年度後半からリモート・デスクトップ・サービスの引き合いは増えていたという。背景には「2020年夏に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックの交通混雑の回避などに備えて、テレワーク環境を整備したい」といったニーズの高まりがあったという。

 ところが2020年に入って、新型コロナ対策でテレワークが企業にとって喫緊の課題になってくると、問い合わせ件数や契約件数などが約10倍に急増した。サービス提供用のネットワーク帯域を従来の10倍に急ぎ拡張するなどの措置を講じたという。

 RSUPPORTの利用者も急増した。「2020年5月のサービス利用者数は同年1月と比べて、数十倍に増えた。特に2020年2月末、政府が新型コロナ対策の基本方針を固めたときと、2020年4月の緊急事態宣言が発令されたときに、顧客からの問い合わせ件数がとても伸びた」。同社日本法人の新上幸二セールスマーケティング部部長は振り返る。

緊急テレワークの切り札に

 社外から社内ネットワークにアクセスする技術はリモート・デスクトップ・サービス以外にも複数ある。例えば、サーバー上に複数の仮想的なデスクトップ環境を整備して遠隔から使えるようにするVDI(仮想デスクトップ環境)や、社外との通信経路における情報セキュリティーを確保することで仮想的な社内ネットワークを社外まで広げるVPN(仮想私設網)などだ。なぜリモート・デスクトップ・サービスに注目が集まっているのか。

 NTTテクノクロスによると、一般に企業がテレワーク環境を整備する場合、まず社外から社内への接続方式やツールを選定してから、その後に検証や導入の手順を決めていくという。しかし、「今回はそうした手順を踏む時間がなく、テレワーク環境をすぐに導入する必要があった。リモート・デスクトップ・サービスは簡単な設定ですぐに使えることから、注目が集まったのではないか」と同社はみる。

 リモート・デスクトップ・サービスを使い始めるには、社外パソコンと社内パソコンの両方に専用ソフトをインストールして設定し、各サービス専用のクラウドを経由すればよい。専用サーバーを導入するといった手間を省けるのが大きなメリットといえる。

 RSUPPORTの新上部長によると、VDIやVPNは新規導入コストがかさんだり、同時に多くのユーザーがアクセスするとパフォーマンスが低下したりする課題があるという。「リモート・デスクトップ・サービスは社外パソコンから社内パソコンにインターネット経由で直接つなげるイメージなので、社内のサーバーやネットワークに過大な負荷をかけないケースが多い」と続ける。

 多くのリモート・デスクトップ・サービスでは、社内パソコンから社外パソコンにファイルの送受信を禁止するように管理者が設定できる。Splashtopの日本法人、スプラッシュトップの鈴木淳平セールスマーケティングマネージャーは「セキュリティーポリシー上、会社にあるパソコンやデータを社外に持ち出すのを禁止している企業で、この機能は特にニーズが高い」と説明する。

マルチモニターを自宅でも

 注目度の高まりに合わせて、リモート・デスクトップ・サービスを提供するベンダー各社は使い勝手の向上や、セキュリティー機能の強化に取り組んでいる。

 使い勝手を高める機能拡張を進めているのがSplashtopやRSUPPORTだ。Splashtopは外付けディスプレーをつないだ会社パソコンの環境を、自宅でも再現できるようにしている。具体的には会社でも自宅でもパソコンに外付けディスプレーをつないでいる「マルチモニター環境」の場合、会社パソコンの画面を自宅パソコンの画面に、会社の外付けディスプレーの画面を自宅の外付けディスプレーの画面に、それぞれ投影する「マルチtoマルチモニター」と呼ぶ機能を提供している。

「Splashtop Business Pro」のマルチモニター表示機能に関する説明資料。従来のSplashtop Businessでは図の左側のように1画面に複数画面を表示することができたが、Splashtop Business Proではさらに図の右側のように各画面に表示できるようにした
「Splashtop Business Pro」のマルチモニター表示機能に関する説明資料。従来のSplashtop Businessでは図の左側のように1画面に複数画面を表示することができたが、Splashtop Business Proではさらに図の右側のように各画面に表示できるようにした
(出所:スプラッシュトップ)
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 同機能は2019年5月から提供を始めた高機能版サービス「Splashtop Business Pro」の一機能である。「映像制作やグラフィックデザイン、CAD(コンピューターによる設計)といったクリエーティブ系や開発系の顧客が利用している」と鈴木マネージャーは説明する。

 同社は以前から提供している「Splashtop Business」でも、会社パソコンのデスクトップ画面と外付けディスプレーの画面を、自宅パソコンの1つの画面にまとめて表示できるようにしている。今回の新機能で自宅でも2画面を使って仕事を効率的に進められそうだ。

画面が一瞬止まる現象、画面転送の工夫で解消

 遠隔での操作性を高める改善を進めているのがRSUPPORTだ。社外パソコンにインストールするRemoteView向けソフト「標準ビューア」などに加えて、「改善型ビューア」を2020年4月から提供し始めた。

 リモート・デスクトップ・サービスの場合、ネットワーク環境によっては、「社内パソコンから届くデスクトップ画面の動きが一瞬止まっているように見える」課題に直面する。この課題を解消できるようにRSUPPORTは改善型ビューアを開発した。

 改善型ビューアは、会社パソコンから自宅パソコンに送るデスクトップ画面について、1秒当たりの画像数を標準ビューアより増やした。これにより自宅パソコンに表示されるデスクトップ画面の動きをスムーズにした。画像数を増やしても動画データの圧縮変換方式をH.264に変更したためデータ通信量そのものは30%以上減ったという。