「(溶接の)職人の魂をロボットに継承したい」――。こう意気込むのは、パナソニックのコネクティッドソリューションズ社プロセスオートメーション事業部の伊藤守氏だ。同社は、ベンチャー企業と共同で溶接部の外観検査を自動化するシステム「Bead Eye(ビードアイ)」を開発した(プレスリリース)。
Bead Eyeは、自動溶接プロセスの後にある検査工程の自動化を狙ったシステム。産業用ロボットの制御ソフト開発を手がけるベンチャー企業リンクウィズ(浜松市)の3D形状認識技術と、パナソニックの人工知能(AI)技術を組み合わせた。両社は2019年6月に協業を発表しており、その成果を1年越しで実用化した。システムは2020年5月にパナソニック スマートファクトリーソリューションズ(PSFS、大阪府門真市)が発売した。
形状検査とAI画像検査を組み合わせ
次のような方法で検査する。まず産業用ロボットのアーム先端に取り付けたスキャナーで溶接ビード部の外観形状をスキャンする。そのスキャンデータを基に欠陥の有無や溶接の良否を判定する。検査方法として「良品比較検査」と「AI外観検査」の2種類を組み合わせているのが特徴だ。前者は良品(マスターワーク)のビードの3D形状と、検査対象のそれとを比較するもの。ビードの欠けや位置ずれ、盛り上がり量や幅、長さの過不足などについて、マスターワークとの一致率を判定する、リンクウィズのこの技術を適用した。後者はスキャンデータを基にAIが穴あきやピット、アンダーカット、スパッタなどの不良がないかを判定する。パナソニックが開発した学習済みAIを利用している。
「良品検査はさまざまな欠陥を検出できるが、穴やスパッタなどの微小な欠陥はAIの方が高精度に検出できる。両技術の利点を組み合わせて多様な欠陥に幅広く対応した」(PSFS熱加工システム開発総括部アーク・ロボティクスソリューション開発部プロセス開発課主幹技師の櫻井通雄氏)。検査時間は、溶接部の長さにもよるが、30mm程度のビードなら3秒ほどで判定できるという。検査結果は自動的にパソコンに保存され、品質トレーサビリティーを確保しやすくなる他、ロボットの制御変数として出力できるので、不良品を自動的にはじき出すといった処理などに利用しやすいという。