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 東京工業大学准教授の宮本智之氏は、出力がkW級と大きいレーザー光線で、走行中の電気自動車(EV)に電力を送る光無線給電技術を提案した(図1)。数十m~数km先の遠方に給電できる。レーザーの向きを変えるのは簡単で、動く車両を追従しやすい。安全の確保に工夫が必要だが、基本的な技術は確立しており、近い将来の実用化をもくろむ。

図1 スマートフォンやドローン、走行中のEVに光無線給電
図1 スマートフォンやドローン、走行中のEVに光無線給電
給電の向きを変えるのは簡単で、電灯などに1個設置すれば広範囲に届く。設置費用を抑えやすい(イラスト:楠本礼子)
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 光無線給電は、高出力レーザーなどを太陽電池に照射することで電力を伝送する技術。宮本氏はこれまで、出力が数W~数十Wの面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)でドローンなどを給電する技術を研究してきた(図2)。2020年5月に自動車技術会で論文発表したのが、出力をkW級に高めることで走行中のEVに給電する構想だ。「自動化の進む工場内を走る無人搬送車(AGV)への給電ならば、5年以内に実用化できる」(宮本氏)と意気込む。

図2 面発光レーザー(VCSEL)でドローンに給電
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図2 面発光レーザー(VCSEL)でドローンに給電
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図2 面発光レーザー(VCSEL)でドローンに給電
東京工業大学の宮本氏による実験の様子(出所:東京工業大学)

 無線給電の主流は、電磁誘導方式である。2つのコイルを向き合わせ、一方に電流を流して発生した磁束を介して、もう一方のコイルに電力を送る。

 給電効率は高いもののkW級ともなればコイルは直径数十cmと大きく、重たくなりがちである。給電距離はせいぜい数十cmと短く、停車中のEVに給電するのが基本となる。道路に多くのコイルを埋め込んで走行中に給電する構想はあるものの、1km当たり約1億円の敷設コストがかかるとされる(図3)。実現性に乏しかった。

図3 電磁誘導方式の走行中給電は路面埋め込み式が主流
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図3 電磁誘導方式の走行中給電は路面埋め込み式が主流
受電コイルを搭載したEVの開発も進むが、課題となるのが大規模なインフラ整備と導入コストだ(出所:東京大学)

 光無線給電は効率で電磁誘導方式に及ばないが、給電距離は数十m~数kmと圧倒的に長い。出力によるが、レーザー光は遠方まで真っすぐに進むためだ。またミラーを使えば、レーザー光の向きは簡単に変えられる。例えば街灯にレーザー光源を設置して、カメラなどで車両の動きを検知すれば、走行中の車両にレーザー光を照射して給電できる。