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 富士通がカナダの拠点をワールドワイドの人工知能(AI)のヘッドクオーター(本社)として位置づける戦略を転換していたことが分かった。2018年末に大々的に発表したものの、富士通の社長が時田隆仁氏に変わった後に、位置づけを見直した。

 富士通がカナダのバンクーバーにAIに関するグローバルでの戦略の策定や実行を担う狙いで現地法人「FUJITSU Intelligence Technology」(FIT)を設立したのは2018年11月のことだった。FITのCEO(最高経営責任者)として、富士通でAIサービスを担当していた吉澤尚子・富士通執行役員常務が就任し、常駐していた。

 一方、19年6月に富士通本体の社長に時田隆仁氏が就任し、IT(情報技術)の会社から、DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援していく会社になるという戦略を打ち出し、20年4月にはDX事業を手がける新会社も立ち上げた。

 こうしたなかでFITに求められる立ち位置も変わってきた。FITの責任者も吉澤氏から、19年10月に富士通の長堀泉執行役員常務に交代。20年2月にFITのCFO(最高財務責任者)だった藤森慶太氏へとバトンが渡された。

 藤森氏は米国やインドなどでの海外経験が長く、2020年始めからCOO(最高執行責任者)兼CFOとしてFITを率いている。

 バンクーバーやトロント、モントリオールなどカナダの都市はAIの研究が進んでおり、優秀な人材も集積している。さらに量子コンピューターの研究も盛んである。北米と世界をにらんだ富士通のAIヘッドクオーターは日本のIT企業の世界戦略として注目を集めた。なぜ転換したのか。どう変えたのか。FITのCEOに就任予定の藤森氏に聞いた。

「AIヘッドクオーター」を掲げ大きな注目を集めた。現在はどうなっているのか?

 現在は「AIヘッドクオーター」とはあまり言わなくなった。実際のところFITとしてやっていることは変わっていない。サーバーを売ってますといった技術ありきではなく、DXの会社になるという富士通全社のミッションのなかで、位置づけが変わった。顧客のDXを支援するため、必要なテクノロジーを社内外から集めて使っていこうという考え方だ。

どのように変わったのか。

 今はFITを富士通のワールドワイドの「センターオブエクセレンス」として位置づけている。顧客に提案をしたり、顧客と富士通の拠点をつないだり、顧客に提案する富士通の組織を支援したりする。AIや量子コンピューターなどの基礎技術は今も昔も富士通研究所が開発している。そうしたものを利用して、世界の顧客とどのようにPoC(概念実装)をすればいいのかを顧客と一緒に考えていくのがミッションと考えている。