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ポストコロナの新しい働き方へ

 リモートワークでの業務には短所もあり、そのままの形で永遠に続けられるものでもない。しかし宮本氏らはリモートワークを実践してみて、これからの「新しい働き方」に関するアイデアが具体的に見えてきたという。「IoT溶接キットを使えば、主婦の方が自宅で作業するとか、会社員の方が副業として取り組むなどの形態も成り立つのではないかと思っている」(市原氏)

 両氏が取り組みつつある、溶接技能者の育成活動にもリモートワークの経験が役立ちそうだ。この育成活動では最初にワークショップを開催し、溶接に興味を持った人を「溶接塾」に案内し、そこで溶接作業の実際を学んでもらう。卒業したら溶接職人として、IoT溶接キットを使って仕事をしてもらう、という考えだ。「リモートワークの仕組みは、溶接塾の修了後のフォローアップに使える」(宮本氏)

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溶接技能者育成のためのワークショップ
溶接技能者育成のためのワークショップ
緊急事態宣言期間中に、一般の来場者を入れずに実施した準備会(出所:クリエイティブ ワークス)
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 さらに「リモートワークのやり方の応用で、町工場ネットワーク『ものづくりのワ』のメンバー企業ともうまく連携できると思う。遠く離れた地方の工場と連携しての作業も可能ではないか。例えば、家庭の都合などで地方に移住せざるを得ない人でも仕事を続けられる、などの利点がありそう」(宮本氏)。

 リモートでの企業間連携を実現するには、前提として各企業において業務がITツールに対応し、デジタル化している必要がある。「社内の業務をデジタル化するには、その業務フローが人や組織にうまく分担できるように論理的に整理されていなければならない。しかし、私たちのような小規模事業者や中小企業はそれができていない場合が多いと言わざるを得ない。中小企業がデジタル化でつまずく原因も、そこではないかと考えている」(宮本氏)。クリエイティブ ワークスも、生産管理システム「Contexer」(アプストウェブ、東京・千代田)がリモートワークを実践する基盤となっており、以前にContexerを導入したときには、まず自社業務の整理から始めたという。

 業務の整理やデジタル化といった努力をしなくても、仕事がとりあえず回っている中小企業が少なくないかもしれない。しかし、クリエイティブ ワークスのような小さな組織であっても、仕事の幅を広げるためにはそうした努力が必要である、と宮本氏は考えている。

 新型コロナ禍は不幸な出来事だが、これまでデジタル化やリモートワークに気後れしていた企業の背中を大きく押す機会にもなった。落ち込んだ経済は、今後再び活性化させていかなければならない。ビジネス活動の在り方が大きく変わり、「今まではそれで済んでいた」ものごとが、これからは必ずしも通用しなくなるだろう。

 リモートワークは、現実的に可能なところを部分的にでも上手に取り入れていけば、働く人やビジネスの可能性を拡大でき、大幅な時間削減とコスト削減にもつなげられる。新型コロナをきっかけとしたリモートワークなどの取り組みは、暫定的な対応ではなく、今後の世界を生き抜くための準備と考えるべきではないだろうか。