溶接を手掛ける町工場、クリエイティブ ワークス(東京・江戸川)。独創的な「溶接キット」により、ものづくり職人のリモートワークという常識外れの取り組みを実現した*。そのリモートワークを開始してしばらく経過した様子を、同社の代表である宮本卓氏と、溶接職人の市原萌氏に聞いた。両氏はリモートワークの状況や、実際に取り組んで明らかになった利点や課題について語った。
リラックスしたリモートワーク環境
市原氏は毎朝、業務開始の1時間前である8時ごろに起床。朝食や身支度などを終え、9時に始業になる。新型コロナウイルス感染症が問題になる前は7時ごろに起きていたので、起床時間は少し遅めになっている。通勤の移動時間削減の効果は大きい。
家を出て電車に乗り、会社に着いてタイムカードを打つ、といった従来の習慣は無くなる。「どうやって気持ちを切り替えているのか」と尋ねると、「確かにそれが問題だと思ったので、毎朝、Webミーティングをやってもらっている」(市原氏)。Web会議システムを利用し、主に作業進捗や課題などについて報告するのが朝のミーティングだ。
Web会議システムの他に、Facebookメッセンジャーを随時使ってコミュニケーションを図る。業務中のコミュニケーションはとてもフランクな感じであるという。「作業の相談だけでなく、今後実施するワークショップのアイデアや、自社のブログ更新などに関してよく話す」(市原氏)
宮本氏は「今後のイベントやビジネスのアイデアについても考えてもらっている。コロナ以前は先のことをじっくり考える時間があまり取れていなかったが、最近はいい時間をつくれているなと考えている」と言う。お互いの顔がよく見えない状態では、コミュニケーションのすれ違いや誤解も生じやすい。宮本氏はフランクなコミュニケーションで、市原氏がリラックスして仕事に取り組めるように心がけている。
市原氏は、いわゆる営業時間中に買い物や家事で作業から少し離れることもある。従来なら、勤務先に拘束されている時間だが「やることをきちんとやってくれているし、自由にしてもらって構わないと思っている」と宮本氏は話す。リラックスしている時間が、仕事の業務効率につながっており、「さらにはイベントなど今後のための創造的なアイデアにつながっている」(宮本氏)という。
クリエイティブ ワークスが参画する、町工場ネットワークの「東京町工場 ものづくりのワ」(以下、ものづくりのワ)のメンバーもリモートワークを実行している。同社より少し大きい規模の企業の例では、VPN(仮想私設網)を導入して事務や設計を従業員が自宅で作業しているという。