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 トヨタ自動車や日産自動車、ホンダはそれぞれ、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)の合成液体燃料「e-fuel」の研究開発に本腰を入れる(図1)。エネルギー生成段階を含むハイブリッド車(HEV)のCO2排出量で、電気自動車(EV)を下回る水準を目指す。2030年に一層厳しくなる環境規制に備える。

図1 カーボンニュートラルな合成燃料e-fuel
図1 カーボンニュートラルな合成燃料e-fuel
ガソリン燃料やディーゼル燃料に20%くらい混ぜるのが効果的とされる(出所:Audi)
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 e-fuelは、水を電気分解したH2とCO2を触媒反応で合成した液体の炭化水素鎖(燃料)のこと。再生可能エネルギーを利用して生成することで、CO2の排出と吸収を同じにする「カーボンニュートラル(炭素中立)」を実現する。

 ガソリン燃料やディーゼル燃料に混合して使える。HEVを含むエンジン搭載車の走行中CO2排出量を減らし、カーボンニュートラルに近づける。日系3社は、効率的な合成法や使用法、事業モデルなどの研究にそれぞれ取り組み始めたことが日経クロステックの調べで分かった。3社ともに、HEVを30年のパワートレーンの軸に据える。

 カーボンニュートラルを実現する液体燃料には、トウモロコシや藻類などから作るバイオ燃料がある。太陽エネルギーを使うものの、生成に時間がかかるのが難点である。e-fuelは工業的に生成できるため、製造時間を短くして大量生産に向くとされる。食料を使わない利点もある。

 e-fuelの研究開発で先行したのが、独Audi(アウディ)だ(図2)。17年にe-fuelの研究施設をドイツに設立したと発表した。30年にかけて厳しくなる欧州の環境規制に、いち早く備える。コストや航続距離などで課題が残りそうなEVの「一本やり」で規制に臨むのは、リスクが高いと考えるのだろう。

図2 Audiはいち早くe-fuelに着目
図2 Audiはいち早くe-fuelに着目
2017年にドイツに研究施設を造った(出所:Audi)
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 欧州が30年に導入するCO2排出量規制は、21年比で37.5%減らす極めて厳しいもの。加えて、25年以降にWell-to-Wheel(1次エネルギーから走行中まで、WtW)で同排出量を規制する議論が現在進む(図3)。

図3 25年以降にエネルギー生成まで評価対象に
図3 25年以降にエネルギー生成まで評価対象に
欧州で有力な自動車の環境評価団体Green NCAPが提案するCO2排出量規制のロードマップ。まずはWtW、2030年以降にLCAにすることを求める。Green NCAPは、自動車評価団体Euro NCAPが運営する。Green NCAPの資料を基に日経クロステック作成
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 走行中だけを評価する現行規制ではCO2排出量がゼロのEVに、発電時のCO2が加わるわけだ。地域の電源構成によってはHEVと大差なくなり、EVに頼って規制をクリアする策を採りにくくなる。HEVなどエンジン搭載車の排出量を減らすe-fuelに、白羽の矢が立った格好である。