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 新型コロナウイルス対策で、政府が接触確認アプリ「COCOA」や「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」などのIT施策を推進する中、独自のIT活用策を講じる自治体も多い。広島県はその1つだ。

 もともと湯崎英彦知事が「DXの先駆者になる」という目標を掲げ、2019年7月にデジタルトランスフォーメーション(DX)推進本部を立ち上げていた。これが奏功し、矢継ぎ早に新型コロナ対策の独自アプリケーションをいくつか開発している。いずれも、業務クラウドサービスを提供する米ServiceNow(サービスナウ)のプラットフォームで稼働するアプリだ。

 1つは、県庁職員を対象に健康状態を記録する「体調管理アプリ」である。2020年5月1日に稼働させた。県庁職員がパソコンまたはスマートフォンから自分のIDとパスワードでログインし、その日の体温やせき、鼻水、呼吸困難などの症状の有無についてチャットボットからの質問に答える形で入力する。

広島県が導入した「体調管理アプリ」のサンプル画面 
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広島県が導入した「体調管理アプリ」のサンプル画面 
出所:広島県

 体調管理アプリの開発に着手したのは2020年4月半ばだという。サービスナウの日本法人と三井情報に開発を依頼。両社が連携しながら2週間で開発した。

 「県庁職員の間で感染を広げたくないという思いで開発した。日々の健康記録簿として使ってもらう」と広島県の桑原義幸総括官(情報戦略)デジタルトランスフォーメーション推進本部副本部長は言う。

「行動記録アプリ」のベータ版を開発

 さらに、県庁職員向けの「行動記録アプリ」のベータ版を開発した。県庁職員1人ひとりが参加した打ち合わせの時間や場所、同席者、3密(密閉・密集・密接)の状況などを記録する。

 県庁職員のデータベースや県庁内の主な会議室のリストと連動させ、打ち合わせの場所や同席者を簡単に入力できるように工夫した。県庁職員以外で打ち合わせに参加した人は備考欄に名前を記入する。「もし県庁内で感染者が出た場合、職員は自分の行動を振り返ることができる」と桑原総括官は話す。

 ただし業務時間外の会合に参加した場合にどうするかなどプライバシーの扱いについて議論を整理できていないこともあり、一部の関係する県庁職員が試験的に利用している状態だ。県庁職員7000人のうち、体調管理アプリを使用した人は運用開始後1カ月で延べ100人、入力件数は300件にとどまる。

 そのため利用者の拡大が課題となっている。今後は「特に県の幹部職員には積極的に利用してもらうよう働きかける」と桑原総括官は方針を話す。そして「県の取り組みを知った県内の市町村や民間企業に興味を持ってもらい、広がればいいと思っている」(桑原総括官)。