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 日本IBMは2020年7月3日、量子コンピューターに関する報道関係者向け説明会を開催。1年間に2倍というIBMの量子コンピューターの性能向上ペースを今後も維持するとしたうえで、みずほフィナンシャルグループや三菱ケミカルなど国内の企業や大学と進めている共同研究の成果を強調。日本IBM社内にコンサルタントを配置するなど、市場・事業開発に向けた体制を整備していると明らかにした。

ブレイクスルー「特定分野では今後数年で実現」

 IBMは量子コンピューターの性能を示すため、量子ビットの数、エラー率、量子ビット同士の連結量を加味した「量子ボリューム」と呼ぶ独自の指標を用いている。日本IBMの森本典繁研究開発担当執行役員によると、IBMの量子コンピューターの性能は2017年以降毎年2倍のペースで向上しており、2019年1月には32量子ボリュームに達した。今後も毎年2倍のペースで性能向上を図るために研究開発投資を実施する計画だ。新型コロナウイルス感染症による研究開発への影響についても「長期投資として実施しているため、直接の影響はない」(森本執行役員)という。

 森本執行役員は、半導体の集積密度が18カ月で2倍になると言われる「ムーアの法則」に対し、地球上の計算資源量は12カ月で2倍になっているとする推計を紹介。そのうえで「古典コンピューターの性能向上スピードと、計算資源の増大ペースの間にギャップがあり、そのギャップは広がる傾向にある。それを解決するのに最も期待が高いのが量子コンピューターだ」(同)とした。

 一般に量子コンピューターは機械学習やニューラルネットワークの計算効率を向上させたり、シミュレーションを高速に実施したりできるとされる。ただ現時点では、既存の古典コンピューターやスーパーコンピューターで同様の演算処理が可能なケースも少なくない。将来的に、古典コンピューターでは不可能な膨大な計算が量子コンピューターにより可能になる「ブレイクスルー」が期待されている。

 では、IBMの量子コンピューターはいつブレイクスルーに達するのか。量子ボリュームが毎年2倍ずつ向上していくことを前提にすると「数年以内に特定分野でブレイクスルーが実現する」(同)という。