全2473文字
PR

 「トヨタ自動車から仕入れるのも選択肢の1つだ」。車両の“心臓部”をライバル企業から調達する可能性を示唆したのは、三菱ふそうトラック・バスで燃料電池(FC)トラックの開発を担当する技術者である。

 ドイツDaimler(ダイムラー)傘下の三菱ふそうは2020年代後半にFCトラックを量産する計画で、現在は量産するFCトラックの詳細を決めるべく「検証を進めている」(同社社長のHartmut Schick氏)真っ最中だ(図1)。

図1 三菱ふそうトラック・バスが試作したFCトラック「eCanter F-Cell」(右)
図1 三菱ふそうトラック・バスが試作したFCトラック「eCanter F-Cell」(右)
2020年代後半の実用化に向けた検証のために開発した。左は、ベース車両とした電気自動車(EV)トラックの量産車「eCanter」である(撮影:日経Automotive)
[画像のクリックで拡大表示]

 車格や動力性能、航続距離など議論すべきテーマは多いが、とりわけ重要になるのが搭載するFCシステムの選択である。FCトラックで最も高価な部品をどこから調達するか。将来の普及を左右するだけに、「様々な選択肢の中から最もコスト競争力の高いメーカーを選定する」(三菱ふそうの技術者)と慎重な姿勢で臨む。

第1の選択は親会社Daimlerとの共通化

 一番素直な選択が、三菱ふそうの親会社で商用車最大手のDaimlerとFCシステムを共用することだ。Daimlerは商用車と乗用車の両面で燃料電池車(FCV)に取り組んでいる。20年6月にはFCの開発体制を再編し、燃料電池システムの量産化に向けた子会社Daimler Truck Fuel Cell(ダイムラー・トラック・フューエルセル)を設立した。

 新会社は、トラック部門が主導する形でDaimlerグループのFC事業を統合。FCスタックや水素タンクなどの主要部品の開発からシステム全体の設計までを担う(図2)。同社はスウェーデンVolvo Group(ボルボ・グループ)が6億ユーロで株式の50%を取得することを決めており、合弁会社になる予定である。

図2 Daimlerが開発中のFCセル
図2 Daimlerが開発中のFCセル
セルを数百枚重ねてFCスタックとする(出所:Daimler Truck)
[画像のクリックで拡大表示]

 商用車市場で大きなシェアを持つDaimlerとVolvoはFCシステムを共通化し、コストを低減していく考え。三菱ふそうとしても同連合と歩調を合わせることを視野に入れるが、「調達するかはタイミングとコスト次第」(同社の技術者)と決めかねる。

 三菱ふそうがDaimlerとてんびんに掛けるのがトヨタだ。トヨタはFCシステムの外販に積極的で、ドイツBMWの乗用車や日野自動車の大型トラック、ヤンマーグループの船舶、実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」など幅広い企業や用途にFCシステムを提供する意向を示している。トヨタは20年末にはコストを従来の1/2に低減したFCシステムを搭載するFCVの次期「MIRAI(ミライ)」を投入する計画で、三菱ふそうにとっても魅力に映る。