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 「製造業の現場と話が通じるエンジニアが最大の強み」――。安川電機が2020年7月1日に設立した製造業向けシステムインテグレーション(SI)子会社「アイキューブデジタル」の社長に就任した竹原正治氏はこう強調する。

新会社アイキューブデジタル社長の竹原正治氏
新会社アイキューブデジタル社長の竹原正治氏
1995年に安川情報システム入社。組み込みソフトウエアの技術者や事業企画を経て、2017年に同社執行役員。(出所:安川電機)
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 アイキューブデジタルは竹原氏が執行役員マーケティング本部長を務めるYE DIGITAL(旧:安川情報システム)から「IoTソリューション」の製造業向け事業を引き継ぎ*1、IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)、組み込みソフトの技術者数十人が移籍。安川電機からは営業、企画などのスタッフ数人を迎え入れ、約70人で出発した。安川電機とYE DIGITALに分散していたスマート工場関連の事業をまとめ、MES(製造実行システム)や工場へのAI、IoT技術の導入をはじめとした、製造業向けSI案件の受注拡大を狙う。5年後の2025年には年間売上高20億円を目指すという。

*1 YE DIGITALの主な事業内容は「ビジネス系SI」「IoTソリューション」「サービスビジネス」(カスタマーサポートサービスによるITシステムの保守・運用サービス)の3つがあるが、そのうちIoTソリューションの製造業向け事業を新会社に移管する。

武器は「組み込み」の実績豊富な技術者集団

 新会社の中核となるYE DIGITALのIoTソリューション事業部門は長らく、メカトロニクス製品向けの組み込みソフトなどで実績を積み重ねてきた。安川電機のサーボモーターを自社製品に組み込んで販売したい顧客に向けて、必要な制御ソフトを提供するといった仕事である。製造業向けのSI案件では大手ITベンダーやAIベンダーがライバルになり得るが、製造業の現場を理解し、メカトロニクスや生産ラインで使われるIoTを知り尽くしているという点で一日の長があると竹原氏は自信を見せる。

 メカトロニクスに関するエンジニアの深い知見は最新のAI技術の生産ラインへの適用などで生きてくると竹原氏は強調する。例えば、ディープラーニング(深層学習)による画像分析技術を使い、生産ラインを流れる製品から不良品を識別するシステムの導入提案をするとしよう。YE DIGITALが提供している画像判定サービス「MMEye」を使うとこうしたシステムが構築できる。

 こうした際に「このケースでは製品を壊さないように柔らかくつかむロボットの導入もセットで必要だ、といった具体的な提案ができるIT企業は少ない」と竹原氏は指摘する。不良品をAIで見つける技術も重要だが、見つけた不良品をラインから取り除く「リアルの仕組み」がなければ現場で使える生産ラインにならないが、IT企業の多くはそこまで目配りできないというのだ。経験豊富な技術者がハードを含めたシステム全体の効果を提案できるからこそ、顧客の投資判断を引き出せるというのが竹原氏の主張だ。