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 割安プランを打ち出して新規参入した楽天モバイルを、携帯大手のソフトバンクとKDDI(au)がサブブランドの「ワイモバイル」と「UQモバイル」で迎え撃つ――。携帯電話の競争が新たな展開を迎える中、大手で唯一サブブランドを持たないNTTドコモが警戒感を募らせている。

 ドコモの吉沢和弘社長は日経クロステックの取材に対し「(月額3000円の料金水準に)1つの競争軸ができている」との認識を示し、「(競合他社のサブブランドに)どのような志向の顧客層が動くのか。もう一度検討しなければならない」と述べた。サブブランドを含めて対抗策を検討していることに含みを持たせた格好だ。

「経営企画部長や副社長の時代にもサブブランドを検討したことがある」と語るNTTドコモの吉沢和弘社長
「経営企画部長や副社長の時代にもサブブランドを検討したことがある」と語るNTTドコモの吉沢和弘社長
(撮影:日経クロステック)
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蚊帳の外に置かれたドコモ

 サブブランドを巡っては近年、ソフトバンクとKDDI系のUQコミュニケーションズがそれぞれワイモバイルとUQモバイルで安値攻勢を仕掛け、大量のテレビ広告などを投じて着々と契約数シェアを拡大。2020年2月までにワイモバイルの契約数は500万件、UQモバイルも200万件を突破した。2020年4月に新規参入した楽天モバイルが月2980円(税別)でデータ通信が無制限(楽天回線エリア)の新プランを繰り出すと、UQモバイルは6月、ワイモバイルは7月に料金を実質値下げした。

 こうした競争の蚊帳の外に置かれているのがドコモだ。同社の吉沢社長はかねて「サブブランドを展開するつもりはない」と公言し、代わりに2019年6月に投入した料金プラン「ギガライト」をサブブランド対策と位置づけてきた。

 携帯大手3社の競争においては、格安スマホ事業者の存在もいわば「ドコモの援軍」のような役割を担ってきた。格安スマホ事業者の大半がドコモから回線を借りて事業を展開しているからだ。

 ドコモにとってサブブランド導入は両刃の剣である。競合他社への防御・対抗策となる半面、既存顧客が雪崩を打ってメインブランドから割安なサブブランドに移行すれば収益へのマイナス影響が大きいからだ。吉沢社長が「私自身、経営企画部長や副社長の時代にもサブブランドを検討したことがある」と語るように過去数回の検討では導入に踏み切れなかった。

 ギガライトと格安スマホで競合他社を挟撃し、動きを封じる戦略を描いてきたドコモ。これまでサブブランド導入を完全否定し続けてきた吉沢社長が「変節の兆し」を見せたのはなぜか。