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 「2020年からソリューションビジネスへの転換にかじを切る」――。こう意気込むのは、ブリヂストン代表執行役Global CEO(最高経営責任者)の石橋秀一氏。2020年7月8日にオンラインで開催した中長期の事業戦略発表会の一幕だ。タイヤ業界首位で盤石な体制を築く同社だが、急激に変化する競争環境に対応すべく変革を急ぐ。キーワードは「脱製造業」。製品を売り切るビジネスモデルから、ソリューションで長期的に稼ぐモデルに軸足を移す。

ブリヂストンが東京都小平市に構える技術センター/東京ACタイヤ製造所。同社の技術開発の中枢である(撮影:日経クロステック)
ブリヂストンが東京都小平市に構える技術センター/東京ACタイヤ製造所。同社の技術開発の中枢である(撮影:日経クロステック)
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 同社は、2020年を「第3の創業(Bridgestone3.0)」と位置付け、ソリューション事業を推進するプラットフォーム「Bridgestone T&DPaaS(ブリヂストン ティーアンドディーパース)」を提唱する。同プラットフォームは、多様なモビリティーシステムとブリヂストンをつなげる役割を担う。タイヤ・ゴム事業の強みを生かしながら、蓄積したデータを活用して顧客に新たな価値を提供していく。

 ソリューション提供では、質の高いデータや情報をどれだけ囲い込めるかが勝敗を左右する。同社は従来、商用車や建設機械用のタイヤで、運行管理やアフターサービスなどの事業を手掛けてきた。ここで蓄積した知見やノウハウを、今後は乗用車向けタイヤといった領域に広げる。

 例えば、車両とタイヤの情報をコネクテッドで収集し、パンクや破損などの運行トラブルを未然に防ぐ。このとき、タイヤに検知器を取り付け、空気圧や温度、摩耗状況などの情報を得る。

 タイヤから得られる情報は多岐にわたり、将来的には自動運転技術の向上にも貢献する。路面の破損や滑りやすさなどの情報をタイヤがセンサーとして収集し、車両制御に生かそうという考えだ。石橋Global CEOは「ソリューション事業で蓄積したデータ、新たな知見やノウハウが、タイヤ・ゴム事業をさらに強くする」と力を込める。

“種まき”に1138億円投資

 同社は、変革を目指して“種まき”を進めてきた。大きく動いたのは2019年4月のこと。欧州子会社を通じてオランダTomTom Telematics(トムトム テレマティクス)を約9億1000万ユーロ(1ユーロ=125円換算で約1138億円)で買収。中核のコネクテッド事業と、欧州86万台分(当時)の車両移動データを手に入れた。

 同買収は、タイヤ首位を争うフランスMichelin(ミシュラン)、高級車ブランド「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」のドイツDaimler(ダイムラー)、米Microsoft(マイクロソフト)や同Verizon Communications(ベライゾン・コミュニケーションズ)も入札に名を連ねていた。他業界の巨大企業が水面下で買収に動いていた事実は、車両移動データの価値の大きさを裏付ける。