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 JR東日本は、列車運行をつかさどる指令業務で人工知能(AI)の活用に取り組んでいる。2020年5月25日に首都圏の列車運行管理を担う東京総合指令室で、新しい業務支援システムを稼働させ改善を重ねている。新システムは人身事故や車両故障、地震、洪水といった異常事態が発生した際に過去の類似事例を引き出して、指令員の判断を支援する。

 「2016年ごろから、指令業務を改革し、輸送品質向上のためにAIを活用できないか模索してきた」。JR東日本の山口修鉄道事業本部運輸車両部ビジネス戦略(輸送)グループ課長はこう話す。

上野東京ラインの列車。複数の路線を直通して走る
上野東京ラインの列車。複数の路線を直通して走る
(出所:JR東日本)
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 列車はあらかじめ計画した運行ダイヤ通りに動く。指令員は指令室に交代制の24時間体制で勤務し、計画外の異常事態が発生したときに情報収集をしたうえで、列車に乗務する運転士や車掌らの関係者に指示を出し、経緯の報告書を作成する。

過去10年分の報告書をAIで解析

 新システム構築に当たり、蓄積された過去約10年分の報告書をあらかじめ自然言語解析AIに機械学習させ、業務ノウハウを抽出した。異常事態が発生した際は、指令員がその情報を新システムに入力すると、過去の類似事例を表示して、判断を支援できるようにした。新システムはJR東日本がNECと共同で開発した。

JR東日本が構築した指令業務支援システムの概要
JR東日本が構築した指令業務支援システムの概要
(出所:JR東日本)
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 首都圏では指令業務が複雑になっている。2015年には東京都心を南北に貫く新設線路を使う「上野東京ライン」が開通し、静岡県から東京都心を経由して群馬県や栃木県まで直通する列車が走る。2019年には私鉄の相模鉄道との直通運転が始まるなど、他社線との直通運転も増えた。指令員は、他社で起こった輸送障害の影響がなるべく自社線に波及しないよう判断する必要がある。

 指令員になるには一定年数運転士や車掌を経験したうえで、さらに数カ月の見習い期間を経なければならない。人身事故などは若手でも対応できるが、豪雨などまれに発生する事象の場合は、ベテラン指令員のほうが豊富な経験を基に的確な判断を下しやすい。