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 「空飛ぶクルマ」と呼ばれるような電動の垂直離着陸(eVTOL)機を手掛けるドイツの新興企業Liliumは、機体に利用する炭素繊維複合材料の供給に関する契約を東レと締結した。2020年7月14日に明らかにした。両社は炭素繊維複合材料にとどまらず、他の高機能材料の研究開発でも協力するという。Liliumは、eVTOL機を手掛ける新興企業の中でも、先頭集団にいる企業である。既に東レの炭素繊維複合材料は、注目のeVTOL機メーカー、米Joby Aviationにも採用されているもよう。今回のLiliumとの合意を契機にして、eVTOL機市場で東レの炭素繊維複合材料が席巻する可能性が高まった。

 コロナ禍によって航空業界全体が苦境にあるものの、それ以前から100億円を超える資金を集めたeVTOL機の新興企業は実用化に向けて研究開発にまい進している。Liliumもそんな新興企業の1つで、2020年3月に2億4000万米ドルを追加で調達することを発表した。同年6月には、この調達額をさらに3500万米ドル上乗せし、2億7500万米ドルの追加出資を受けることを明らかにした。これにより調達額は累計で3億7500万米ドル(約400億円、1米ドル=107円換算)に達した。3500万米ドルの追加投資では、米Tesla(テスラ)の大株主である英Baillie Gifford(ベイリー・ギフォード)が新たに参加し、話題をさらった。

飛行するLiliumの機体「Lilium Jet」
飛行するLiliumの機体「Lilium Jet」
(出典:Lilium)
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 Liliumは、2015年創業の企業で、2020年6月上旬時点の従業員数は450人超である。2025年までの実用化を目標に、5人乗りのフル電動型の機体「Lilium Jet」を開発中。2019年5月には、機体の外観などと共に、試験飛行をする様子を見せた。最高速度は時速300kmで、航続距離は300kmと、フル電動型のeVTOL機として、高速で、かつ航続距離も長いことが特徴である。機体の量産準備を進めており、2025年までに、世界のさまざまな都市で、Lilium Jetによるエアタクシー運航を目指している。2020年7月には、拡張性を高めた離着陸場のコンセプトを発表するなど、活動が盛んだ。新たに獲得した資金は機体開発の他、量産準備などに充てる予定である。

Liliumが2020年7月に発表した離着陸場のコンセプト
Liliumが2020年7月に発表した離着陸場のコンセプト
(出典:Lilium)
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