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 コールセンター運営大手のベルシステム24ホールディングス(ベルシステム24)は2020年7月、自然言語処理の人工知能(AI)を活用してコールセンターの業務効率改善を支援するクラウドサービスを始めた。ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)と共同で提供する。独自開発のAI検索エンジンなどを提供することで、メールによる問い合わせ対応業務の効率化と削減につなげる。価格は初期導入費用が150万円程度から、月額利用料は30万円程度から。

 新サービスは、FAQデータベースの中からユーザーが求める「回答」を高精度に見つけ出す検索エンジン「Mopas(モーパス)」と、モーパスやFAQデータベースの整備を半自動化する機能「Knowledge Creator(ナレッジクリエイター)」で構成される。ベルシステム24が持つコールセンター業務の知見と、ソニーCSLのAI研究の知見を組み合わせて開発した。両社が共同でベルシステム24内に設立した「イノベーション&コミュニケーションサイエンス研究所」の最初の成果物という。

 例えば、Web問い合わせフォームを使った業務の場合、ユーザーが自由文で質問を入力すると、モーパスがFAQを検索して解答候補を自動回答する。この回答で解決しなかった問い合わせのみ、コールセンターのオペレーターがメールで対応する。問い合わせの多くがコールセンターに届く前にモーパスで解決するので、人手によるメール対応業務の負荷軽減や効率化につながる。ベルシステム24でイノベーション&コミュニケーションサイエンス研究所長を務める松田裕弘執行役員CIO(最高情報責任者)は、「試験導入したある企業の事例では、メールのトランザクションが7割近くも削減された」と説明する。

数十万パターンの学習モデルから最適なものを選択

 モーパスの特徴は、導入企業が保有するFAQデータのみで検索精度の高いAIモデルを構築できることだ。FAQを教師データとして「wordVec2」や「CNN(Convolutional Neural Network)」、「RNN(Recurrent Neural Network)」、「TF-IDF(Term Frequency-Inverse Document Frequency)」といった複数のアルゴリズムと、自動設定のパラメーターを組み合わせて数十万パターンの学習モデルを生成。その中から精度の高いモデルを選び出し、コールセンターの運用管理者に利用を提案する仕組みだ。新たなアルゴリズムが登場した場合にも、必要に応じて追加することが可能という。

 従来の検索エンジンでは、通常は特定のアルゴリズムが搭載されているため、業種・業態によってアルゴリズムの相性が異なり、検索精度に大きなばらつきがあったという。またFAQ以外にも電話やメール、チャットの応対履歴など、さまざまなデータを教師データとして用意する必要があることもハードルになっていた。応対履歴のデータをきちんと管理できているコールセンターはごく一部に限られているからだ。

 こういった課題を解決するべく開発したのがモーパスだ。少ない学習データでモデルの精度を高められる「データ拡張(Data Augmentation)」と呼ぶ手法や、学習モデルの生成・評価を自動化する技術といったソニーCSLの研究成果などを生かしたという。