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 「もし生分解性プラスチック*1の普及が新型コロナ前にもっと進んでいたら、恐らく大いに役立っていただろう」と残念そうなのは、海洋マイクロプラスチック問題に詳しい東京農工大学教授の高田秀重氏。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)流行の影響で、使い捨て食品容器の需要急増や無料レジ袋配布の復活など使い捨てプラスチック製品削減の動きが一時的に逆戻りする流れが出てきている。高田氏は「生分解性プラスチックを問題解決に役立てるべきだった。そこに生分解性プラスチックの出番がある」と語る。

*1 生分解性プラスチック:微生物の働きにより、コンポスト(堆肥化設備)や土中などで水と二酸化炭素に分解するプラスチック。
(sunny/PIXTA)
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レジ袋有料化なのに新型コロナで使い捨てプラ製品に需要

 2020年7月1日から日本国内でもレジ袋が有料になった。このちょっと唐突な政策は、海洋マイクロプラスチックの削減や防止を目的に始まった欧米での使い捨てプラスチック製品への規制の流れに追従したもの。欧米では数年前から、レジ袋やストローといった1回利用(使い捨て)のプラスチック製品を禁止するなどの規制が当たり前になっている。実際、2019年秋にドイツで会ったデュッセルドルフ在住の日本人は「使い捨てのコップやストローは使わないのがドイツの生活では常識になった」と話していた。

 レジ袋有料化の裏で生物由来プラスチック*2の需要が拡大している。今回の法律では、生物由来プラスチック25%含有の材質のレジ袋なら無償提供できるからだ。例えば、すかいらーくホールディングス、日本ケンタッキー・フライド・チキン、日本マクドナルド、吉野家などが法律の規定に従い、材質を転換してテークアウト用などにレジ袋の無料提供を続けている。

*2 生物由来プラスチック:生物(多くは植物)組織から造り出したプラスチック。植物由来プラスチックは、処分時に燃やして二酸化炭素が発生しても、もともと植物が空中の二酸化炭素を光合成で固定したものが元に戻っただけで二酸化炭素を増やしていない(カーボンニュートラル)、と考える。

 生分解性プラスチックで、かつ生物由来プラスチックであるポリ乳酸(PLA)も、コロナ禍のもとで需要が伸びているという。同プラスチックに詳しい小松技術士事務所所長・ものづくり名人の小松道男氏によると「主要材料メーカーからの年内出荷分は売り切れの状況」。生産が追い付かないのは原材料となるサトウキビなどの不足ではなく、発酵により乳酸を生産する工程がネックになっているという。

生分解性・生物由来のポリ乳酸(PLA)で製造したパッケージ類
生分解性・生物由来のポリ乳酸(PLA)で製造したパッケージ類
2019年10月に開催された「K2019」のオランダ・Total Corbion PLA(トタル・コービオンPLA)のブース(ドイツ・メッセデュッセルドルフで)。(日経クロステックが撮影)
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 ところで、使い捨てプラスチック製品規制の言い出しっぺであるはずの欧米で、逆風が吹き始めた。新型コロナの拡大のためだ。レジ袋の有料化を停止するなど、欧米の幾つかの地域で規制を緩める動きがある。顧客の持ち込むマイバッグが店員や店舗を訪れる他の顧客にウイルスを感染させる媒介となり得るとの考え方による。また、新型コロナ以降、テークアウトの増加でプラスチック製食品容器やレジ袋のごみが世界的に増えている。使い捨てプラスチック製品削減の動きは新型コロナの影響で一時的にせよ逆戻りしたように見える。