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 遠隔リハビリの技術やサービスの開発が加速している。AIやIoT、ウエアラブル端末を活用して、自宅にいる患者が離れた場所にいる医師や作業療法士らのアドバイスを受けながらリハビリを実施できるようになってきた。遠隔リハビリは、新型コロナウイルス感染症の拡大で通院に抵抗のある人へのリハビリ支援につながる可能性もある。

IoTバイクを活用しながら遠隔リハビリを実施するイメージ
IoTバイクを活用しながら遠隔リハビリを実施するイメージ
(出所:リモハブ)
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 日本初となる遠隔による「心臓リハビリ」の医師主導治験が2020年7月中にも始まりそうだ。大阪大学大学院医学系研究科は、心疾患の患者に自宅で遠隔リハビリ用のシステムを使ってもらい、歩行できる距離がどれほど伸びたのかを検証する準備を進めている。遠隔リハビリ用のシステムは、大阪大学発ベンチャーのリモハブ(大阪府吹田市)が開発した。安全性や効果が確認できれば、リモハブは遠隔リハビリ用のシステムの承認申請を目指す方針だ。

 心臓リハビリは、心不全などの心疾患の患者が、心臓機能の低下を抑えるために運動などを実施するもの。患者は、フィットネスバイクなどの運動機器が設置された病院内で、医師や作業療法士、看護師らの指導を受けながら実施するのが一般的だ。

 心不全を発症すると、一度退院しても再発や再入院に転じるケースが多い。再発や再入院を防止する方法として、診療ガイドラインで心臓リハビリが奨励されている。実際、心臓リハビリを実施した場合、患者の再入院率を減らせるとする報告もあるという。「心臓リハビリによって、心臓や肺の呼吸、血管、交感神経の機能が整えられる効果があり、それが再入院率の低下につながると考えられている」と医師主導治験を担当する、大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学の坂田泰史教授は説明する。

 ただ、日本での心臓リハビリの実施率は低い。「継続してリハビリを実施するのが大切だが、退院後もリハビリを続けているのは1割にも満たないのが現状だ」(坂田教授)。退院後も外来で心臓リハビリを続ける患者が少ないのには、いくつか理由がある。その1つは、特に高齢の患者は通院距離や通院する手段がハードルになり、定期的にリハビリを続けることが難しいためとされる。

 今回の医師主導治験では、既存のリハビリの課題解決に役立ちそうな遠隔心臓リハビリの安全性や効果を確かめる。治験に用いる遠隔リハビリ用システムは、医師が利用するアプリと患者が利用するアプリ、ウエアラブル心電計、IoTバイクで構成する。患者の血圧や脈拍、心電波はリアルタイムに遠隔地にいる医師らと共有。医師はそれらの情報や問診の情報を参考にしてIoTバイクを動かすスピードなどを指導し、患者はアドバイスを受けながらリハビリを進める。

 ⼤阪⼤学の坂⽥教授らは以前、今回の医師主導治験に先駆けて、70歳代から90歳代の10⼈の⼼疾患の患者を対象にした遠隔リハビリシステムの臨床研究を実施した。リモハブの遠隔リハビリシステムについて、その安全性とともに、患者が継続して実施できるかを確かめるためだ。その結果、遠隔リハビリシステムと直接的に関係のある有害事象は確認されず、参加者は36回のリハビリ回数のうち平均して33.8回(93.9%)リハビリを続けた。さらに、リハビリ後の歩行距離が平均で50メートルほど伸びたという。大阪大学はこれらの結果から効果を得られる可能性があると判断。今回の医師主導治験では、全国8カ所の施設で128人を対象に遠隔リハビリの効果を確かめる方針だ。