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 新型コロナ禍の緊急経済対策として、日本の全住民に1人ずつ10万円を支給する特別定額給付金の事務作業が山場を超えつつある。一部の大都市では現在も給付事務の大量処理が続いており、給付が8月にずれ込むケースもある。想定外の事態が遅れを招いたが、真因はより根深い。

 総務省が公表した2020年7月17日時点での全国での給付率は93%に達した。しかし一部の大都市では現在も給付事務の大量処理が続いている。各市の公表によると、千葉市は2020年7月16日時点での給付率が69%、大阪市は7月21日に予定する振込分を含めた給付率が75%、川崎市は7月20日の給付率が66%だ。給付率は順調に上がっているものの、給付が遅れた大都市では、6月返送の申請書でも給付が8月上旬になるケースも生じる見通しだ。

 例えば給付率が7月14日時点で70%弱の世田谷区は、6月26日~7月3日までの返送書類の給付が8月3日になると告知している。申請書の到着から給付まで1カ月以上かかることになる。

世田谷区の給付率の推移(オレンジ色)。現在は70%弱で、6月末の書類返送分も一部は振り込みが8月上旬になると告知している
世田谷区の給付率の推移(オレンジ色)。現在は70%弱で、6月末の書類返送分も一部は振り込みが8月上旬になると告知している
出所:世田谷区
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 多くの自治体は2020年5月中に申請書を発送し、受け付けた申請の大半は6月中の給付を目指していた。給付が遅れた大都市では想定から1~2カ月の遅れだ。

 遅れの直接的な理由は、想定外が重なって書類郵送や給付事務体制の立ち上げに時間を要したことが大きい。一方、給付を急ぐあまりオンライン申請と郵送申請ともに自動化への検討が不十分で、自治体が人海戦術に頼る方法を選択せざるを得ない状況に置かれていた点も見逃せない。

借り上げた事務センターが想定外の電源不足

 人口が多い政令指定都市のうち、2020年6月末の時点で給付率が1ケタ台にとどまったのが大阪市と千葉市、名古屋市だった。ほかに川崎市や相模原市、世田谷区など、現在も事務の大量処理が続いている。一方で、札幌市や新潟市などは6月末時点ですでに給付率90%を超えるなど、政令指定都市の中でも給付の進ちょくは大きく分かれた。

 特に給付事務の立ち上げが遅れた大阪市や千葉市、名古屋市などに共通するのがシステムの調達や事務センターの体制構築などで想定外の事態が発生していたことだ。

 千葉市はまず給付金向けのシステム調達で想定外が発生したという。当初はITベンダーの見通しも踏まえ、既存のシステム資産を生かして2020年5月中旬の申請書の印字と発送を目指していた。しかしITベンダーの調整で想定外が発生し、システムの稼働が2週間ほど遅れたという。

 大阪市は凸版印刷とJTBのジョイントベンチャーに給付事務を委託した。システムの準備と申請書の印刷・発送は当初計画から大きな遅れはなかったという。しかし2020年6月上旬から書類の大量審査を見込んでいた事務センターの立ち上げで想定外が発生した。新たに借り上げたオフィスビルで電源容量が不足していたのだ。

 事務センターではパソコンなどのほか業務用スキャナーを12台導入したが、ここで入居したビルの電源容量不足が判明。しかも、返送された申請書の処理が追いつかないと判断し、18台への増設を決めた。2020年6月はこれらの対応に費やされたほか初期の審査作業も作業者が不慣れではかどらなかったという。大阪市の給付率が2020年6月下旬時点で3%台にとどまったのは、こうした事務センター立ち上げでの想定外が大きかった。