半導体設計に関する国際イベント「57th Design Automation Conference(DAC 2020)」がオンラインで開催された(会期は米国時間の2020年7月20日~24日、多くのコンテンツは8月1日までビデオ・オン・デマンドで聴講可能)。新型コロナウイルスの影響がなければ、DAC 2020は、米国サンフランシスコで半導体製造の国際イベント「SEMICON West」と初めて併催されていた(関連記事:グーグル、MS、AWSがここでも存在感、IC設計の国際イベントに3つの変化)。
初日の20日の午前中に、恒例となったEDA(Electronic Design Automation)業界の重鎮であるWally Rhines氏(米Mentor, a Siemens businessのCEO Emeritus)の講演があった。さまざまな資料を使っての分析を披露する同氏の講演には定評がある。特にEDAベンダーの業績を左右する、顧客である半導体業界の動向分析は、市場調査会社のそれとは一味違っており、多くの聴講者を集めている。今回の講演でも複数のトピックを語っていたが、多くの時間を割いていた中国の半導体の状況を以下で紹介する。
現在、中国の半導体で最もホットなトピックは米中貿易戦争だろう。米国政府が課した規制や圧力により、米国と中国だけでなく、さまざまな国や地域の企業にも影響が出ている。例えば、台湾TSMCは中国・華為技術(ファーウェイ)の半導体設計子会社(いわゆるファブレス半導体企業)である海思半導体(ハイシリコン)へのチップ供給を止める見込みだ。TSMCにとってハイシリコン相手のビジネスは小さくない。Rhines氏が見せた米IC Insightsの資料に基づくスライドでは、2019年のTSMCの売上高のうち50億米ドル(約5400億円)はハイシリコンへのチップ供給による。同じ年の米Appleからの売上高の80億米ドル(約8600億円)に引けを取らない。
ただし、Rhines氏は、米国政府が課した規制や圧力の有効性には疑問を呈している。例えば、米国由来の技術を使った製品の供給禁止先リスト(いわゆるエンティティーリスト)に中国のすべてのファブレス半導体企業を入れられないだろう。同氏が見せたスライドでは中国には1000を超える半導体の設計企業があり、しかも以前に比べて事業規模が大きくなり力をつけている。ハイシリコンの代わりを務められる中国企業は多数ある。また、同氏は、通信機器メーカーのリーダーであるファーウェイへのチップ供給を全面的に禁止した場合、米国半導体メーカーへの悪影響が小さくないことを指摘した。