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 「こんな製品売れるわけがない」――。

 そんな社内の評価の中、なんとかクラウドファンディングサイト「Makuake」での出品にこぎ着け、300万円の目標金額のおよそ55倍の1億6607万2180円の支援額を獲得したイヤホンがある。オウルテックが開発した2wayイヤホン「KPro01」だ。この支援額はMakuake史上、歴代3位の記録だという。

 KPro01が特徴的なのは、USB Type-Cでの有線接続と、ワイヤレス接続の両方をサポートしつつ、Type-C接続時に充電ができるという点である。こうした機能を持つイヤホンは、同社が調べた限り市場には存在しないという。

2wayイヤホン「KPro01」のプロトタイプ
2wayイヤホン「KPro01」のプロトタイプ
(撮影:日経クロステック)
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 仕掛け人は、オウルテックで商品企画を担当する同社企画部広報グループの安藤省吾氏だ。企画当初から社内の評価はボロボロ。「商品化する際に、色々と社内で反対された」(安藤氏)。例えば、Type-Cポートを搭載したスマホは普及しているものの、自社のType-C端子を搭載したイヤホンの売り上げは芳しくなかった。そのため社内では「KPro01も『売れるわけがない』と言われていた」(安藤氏)。

 KPro01は、米Qualcomm(クアルコム)のオーディオチップ「QCC3020」を搭載するワイヤレスイヤホンで、音楽リズムゲーム(音ゲー)用にも使える製品として企画された。ただし無線接続では音声に遅延が生じて映像と音声がずれるので音ゲーには適さない。

 そこで、手軽に音楽を楽しむための無線接続に加えて、音ゲーのプレー時は有線接続ができる2way方式とした。有線接続にはType-C端子を使うが、同時に充電も可能だ。USB Type-Cと無線の双方で接続できる2way方式イヤホンは世界でも例がないとみられる、新しい挑戦のプロジェクトだった。

オウルテック企画部広報グループの安藤省吾氏
オウルテック企画部広報グループの安藤省吾氏
(撮影:日経クロステック)
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 「ヒット商品は会議で8割反対されると言われるが、まさにそんな状況だった」(安藤氏)。失敗から学ぶべきだというチャレンジ精神のある企業文化だったため、上司が味方となってくれてクラウドファンディングの開催まではこぎ着けたものの、「通常業務はおろそかにしないこと」という条件を付けられた中での船出となった。「そのため、開発に最低限必要な額である300万円を目標金額に設定した」(安藤氏)。普通は、クラウドファンディングの成功を印象付けるために目標金額は低めに設定するが、この金額でも高めと思えるものだった。

 ところが終わってみれば、プロジェクトは大成功を収めた。支援者への出荷が終了後、2020年内をめどに一般販売も予定されているほどだ。

 KPro01の開発は、安藤氏と声優の小岩井ことり氏との出会いから始まる。「オウルテックのオーディオブランド認知を広げるために、あるイベントに参加して、そこで小岩井氏と知り合った」(安藤氏)。小岩井氏のオーディオや音楽の知識にほれ込んだ安藤氏は、その後に打ち合わせの機会を得て、コラボイヤホンを発売することを提案した。しかし、小岩井氏からは初め、「単なるコラボでは出したくない」と断られたという。