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 総務省は、携帯電話番号を変えずに契約する携帯電話事業者を変更する「番号持ち運び制度(MNP)」の手数料を見直す検討に着手した。現状の税抜き3000円から無料にする案も選択肢に挙げ、総務省が開く有識者会合で2020年秋をメドに提言をまとめる。

 MNPの利用件数は2013年度の657万件がピークで、近年は年度当たり500万件前後に「低迷」している。総務省は2019年10月に施行した改正電気通信事業法で事業者間の競争活性化を狙ったが、その後のMNP件数はむしろ減っているという。

MNPの件数推移。近年は500万件程度で低迷傾向にある。
MNPの件数推移。近年は500万件程度で低迷傾向にある。
出所:総務省
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 格安スマホを展開するMVNO(仮想移動体通信事業者)も最近は加入者獲得に苦戦している。NTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社間における加入者の流動性が下がっているだけでなく、大手3社から楽天モバイルの自営回線(MNO)を含めた新興事業者への流出も鈍っている。総務省はその一因がMNPにあるとみる。

 と言っても3000円の手数料が無料になっただけで、利用者が事業者乗り換えをためらわなくなるとは考えにくい。総務省が狙うのはもう1歩踏み込んだMNP制度そのものの見直しだ。

乗り換えコスト「実質ゼロ円」も

 MNP手数料の見直しについては、2020年7月21日に開かれた総務省の有識者会合「競争ルールの検証に関するWG(ワーキンググループ)」で、総務省側から案を提示した。案は3つで、手数料を無料にする案、実際にかかった経費を基に原価ベースに値下げする案、現状を維持する案――である。21日の会合では「MNPにより携帯電話事業者は利益を得ている」など、構成員からは値下げや無料化を後押しする発言が相次いだ。

 一方で手数料の高低が本当に競争を左右しているのかについては懐疑的な見方も多い。既に多くの携帯電話事業者が独自に乗り換えコストの引き下げに努めているからだ。通常は3000円程度かかる契約事務手数料を無料にする、MNP手数料を実質的に負担するなどのキャンペーンを展開する事業者もいる。現状で最低6000円はかかる乗り換えコストを、3000円もしくは実質ゼロ円に近く引き下げているケースがある。

 むしろ利用者からは「乗り換えるのが面倒」もしく「面倒にみえる」といった手続きの煩雑さを嫌う傾向が、複数のアンケート調査に表れている。そこで総務省はMNP手続きをワンストップ化するなど、乗り換え手続きの複雑さにメスを入れようとしている。

 MNP手続きのワンストップ化とは、乗り換え先の携帯電話事業者と契約するタイミングで同時にMNP手続きもできるようにすることである。現状のMNPでは、まず既存の契約先に解約を申し込み、ここでMNPの予約番号を取得しなければいけない。これがワンストップ化されれば、MNPのほか、制度設計によっては解約手続きも乗り換え先との契約申し込みで済ませられるようになる。