ソフトバンクは米NVIDIA(エヌビディア)のクラウドサーバーを利用した、5G(第5世代移動通信システム)時代を念頭においたクラウドゲーム「GeForce NOW Powered by SoftBank」(以下GeForce NOW)を2020年6月に開始した(図1)。高負荷なゲーム処理をクラウドが肩代わりし、スマートフォンやPCなどの端末でも本来高性能なPCが必要なゲームを遊べる。サービス開始に当たって課題になったのがストリーミングの遅延をいかに抑えるのかという点だ。ソフトバンクはエッジサーバー(MEC)を活用することで課題を解決した。
GeForce NOWは、ゲームの処理をクラウドサーバーが担い、描画した映像をスマホやPCなどにストリーミングすることで気軽にゲームを楽しめるようにしている。5GのほかLTEといった携帯電話回線、Wi-Fiなどを通じて利用する。ソフトバンクIT-OTイノベーション本部クラウドゲーミング技術課課長代行の矢吹歩氏は「高価なPCのメンテナンスや維持費が不要。サーバーにデータがあるため、ゲームの容量でハードディスクなども圧迫しない」とメリットを強調する。
一般的にクラウドゲームはストリーミング遅延が課題になる。クラウドサーバーで描画した映像と、実際に操作する端末との間でズレが生じると、快適なゲーム操作ができない。矢吹氏は「快適なゲーム操作の目安として40ms内の遅延を目指した。40ms内の遅延だと1秒で1~2フレーム遅れるくらいだ」と打ち明ける。
キャリア網とインターネットの間にエッジを設置
ゲームの描画処理をするクラウドサーバーをインターネット上に設置した場合、数百ms程度の遅延が発生することも珍しくない。物理的な距離が存在するほか、さまざまな通信機器を経由することで遅延が発生するからだ。ソフトバンクは、遅延を抑えるためにソフトバンクのキャリア網とインターネットの間にクラウドサーバーを設置した(図2)。いわゆるエッジサーバー(MEC)だ。
遅延を限りなく抑えるには利用者にさらに近い、基地局にエッジサーバーを置くこともできる。ただしその場合、「利用できるユーザーがソフトバンクユーザーのみになってしまう」(同氏)。同サービスはソフトバンクの携帯電話ユーザー以外でも利用できるようにしているため、エッジサーバーは現在の位置がベストということになったという。