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 「現在、世界中(の通信事業者やメーカー)から多くの引き合いや問い合わせに応じている。近々、それらの商談について実績の一部を紹介できるだろう」。

 NECが2020年7月31日に開催した、2020年4~6月期連結決算(国際会計基準)の発表会見。森田隆之執行役員副社長兼CFO(最高財務責任者)が自信ありげにこう語ったのは、「5G(第5世代移動通信システム)」関連事業の先行きに関してだ。 

 世界の通信機器ビジネスを牛耳っているのは中国の華為技術(ファーウェイ)、スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアだ。主戦場である携帯電話の基地局市場では3社だけで約8割のシェア(売上高ベース)を握る。これに対してNECのシェアは1%にも満たない。規模で劣るNECは今回の会見で、パートナー戦略の“3段撃ち”によって大手を追撃する方針を改めて示した。

 その1つ目が2020年6月に発表したNTTとの資本業務提携。次世代通信インフラ技術の共同開発が目的だが、足元で注力するのは5G対応基地局だ。

2020年6月25日に資本業務提携を発表したNTTの澤田純社長(右)とNECの新野隆社長兼CEO(左)。電電ファミリーのような内需中心ではなく外需を取り込む新たな日の丸連合を形成 (出所:NEC)
2020年6月25日に資本業務提携を発表したNTTの澤田純社長(右)とNECの新野隆社長兼CEO(左)。電電ファミリーのような内需中心ではなく外需を取り込む新たな日の丸連合を形成 (出所:NEC)
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 基地局は複数の装置を組み合わせて運用するのが一般的だが、結局のところ各装置のベンダーは1社でそろえる必要がある。NECとNTTは基地局装置のマルチベンダー調達を可能にする国際仕様「Open RAN」の普及促進と、対応製品の開発を急ぐ。Open RAN対応の基地局で2030年までに2割のシェア獲得を目指しており、「(目標を達成すれば)年間3000億円から4000億円の事業規模になる」(森田副社長)とソロバンをはじいている。

 パートナー戦略の2つ目は楽天モバイルとの提携だ。両社は楽天モバイルの5G(第5世代移動通信システム)向けの通信基盤を共同開発する。楽天モバイルはこの通信基盤で得た構築・運用ノウハウを海外の通信事業者へ外販する構想を掲げ、NECもこれに乗じて関連製品の海外での拡販を狙う。

楽天モバイルが試作した5G基地局 (撮影:日経クロステック)
楽天モバイルが試作した5G基地局 (撮影:日経クロステック)
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 そして5G基地局では2018年から韓国サムスン電子ともタッグを組んでいる。機器の開発を分担するほか両社の販路を生かして世界市場を共同開拓する。これが3つ目のパートナー戦略だ。

 NTT、楽天モバイル、サムスン電子――。3社3様の相手と組み、あの手この手で世界市場に打って出るNEC。背景にあるのは「ファーウエイ・エリクソン・ノキアに頼って通信インフラを運営する状況から抜け出したい」と考え始めた世界の通信事業者などからの強い手応えだ。加えて米中摩擦の再燃も追い風になっている。5Gの覇権を狙う米政府によるファーウエイ排除の動きが欧州などに伝播し、相対的にNECなどの存在感が高まっている。

 NECが基地局市場のシェアを拡大できれば量産効果を通じて価格競争力も高まる。それは、以前なら「うちも市場競争の中でやっている。割高でも国産だから買おう、ということにはならない」(NTTグループ幹部)とにべもなかったNTTにとっても大きな朗報となる。国内ではNTTドコモがNECから大量の基地局を調達しているからだ。海外をにらみ積極外交を繰り広げる今のNECに、国内通信インフラに巨額を投じるNTTに収益基盤を依存していたかつての「電電ファミリー」の面影は薄い。

 5Gビジネスへ前のめりの姿勢を強めるNEC。一方で気になるのは、自他共に認めるライバルである「あの会社」の動向だ。