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 水素で発電して走る燃料電池(FC)ゴミ収集車の試験運用が、2021年第2四半期(4~6月)にも東京都港区で始まる。早稲田大学の研究チームが、小型トラック向けFC部品の選定と車両改造を担い、東京都および港区と連携して車両の使い勝手を評価する。FCスタックと水素タンクを一体に設計し、箱型モジュールとして車両に組み込んだ。非稼働時間を短く抑えられるFCの特徴を生かした運用方法を探る。

早大の研究チームが部品選定と車両改造を担ったFCゴミ収集車
早大の研究チームが部品選定と車両改造を担ったFCゴミ収集車
“心臓部”にあたるFCスタックと水素タンクは、一体設計として2段構造の箱型モジュールに組み込み、キャビン(車室)とパッカー(積み込み装置)の間に搭載した。水素タンクは合計容量102Lで、満充填時には運搬走行で100km、収集走行を交えた実用的な走行パターンで60k~70km走行できる。(出所:早稲田大学)
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 FCスタックと水素タンクを組み合わせたモジュールは、キャビン(車室)とパッカー(積み込み装置)の間に搭載した。“心臓部”にあたるモジュールの内部は2段構造を成す。

 下段に、カナダHydrogenics(ハイドロジェニックス)製のFCスタックを備える。同スタックは、定格出力33kWの固体高分子形である。上段には、韓国ILJIN Composites(イルジン・コンポジッツ)製で充填圧力82.5MPaの水素タンクを2個並べた格好だ。容量は1個当たり51Lで、合計容量は102Lとなる。

 シリーズハイブリッド車(HEV)のように効率の良い出力を維持して発電し、車両底部に備えた容量24kWhの東芝製リチウムイオン電池パック「SCiB」に電気をためる。駆動用モーターは、減速機やインバーターと組み合わせて車両前部に搭載した。ベース車両と同じく前輪駆動で走行する。

 早大理工学術院教授の紙屋雄史氏、同大学研究院客員准教授の井原雄人氏が中心となって、FCゴミ収集車用の機構部品を選定した。井原氏は「ゴミの積載量を確保するため調達部品の軽さにこだわった」と話す。

 ゴミ収集車の走行パターンには、ゴミを集めて回る「収集走行」と収集後にゴミ集積場まで運ぶ「運搬走行」がある。ストップ・アンド・ゴーが多い収集走行では燃費が倍近く悪化しやすい。

 開発車両では、計102Lの水素タンクを満充填とした場合、運搬走行で100kmほど、収集走行を交えた実用的な走行パターンでは60k~70km走れるように設計した。ともに積載量1トンの半積載状態を想定。一般的なゴミ収集車は1日100km弱走ることが多いため、開発車両の場合、走行ルートを選べば途中で再充填せずに運用可能とみる。

 乗用車と同じく、商用車の領域でも新技術「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」に向けた開発が進む。電動化では、燃料電池車(FCV)以外にも、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)という選択肢がある。これらは、1日の運用距離に応じて使い分けるのが一般的な考え方だ。