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 「オンラインで『ワイガヤ』ってできないかな。600人で」

 きっかけは、知り合いの部長から掛かってきた1本の電話だった。電話を受けたのは、ホンダ知的財産・標準化統括部標準化推進部先進事業知財課の仲山修司氏である。日本で緊急事態宣言が発令される前日、2020年4月6日のことだった。

 ホンダはワイガヤを、20人ほどで実施してきた。規模を一気に30倍に拡大し、従来の対面形式ではなくオンラインで実施してほしいという。

 「やります」

 いきなりのむちゃ振りに驚きつつも、仲山氏は即答した。オンラインでワイガヤを実施した経験があったわけでも、明確な解決策を持っていたわけでもない。それでもホンダは、20年4月15日にはワイガヤをオンラインで実施している。しかも、参加人数は要望通りの600人と大規模だ(図1)。

図1 ホンダはZoomで600人規模の「ワイガヤ」
図1 ホンダはZoomで600人規模の「ワイガヤ」
2020年4月に入社した新卒社員が全員参加し、「今後30年通用する新しい4輪事業のサービス」をテーマに5日間議論した(出所:ホンダ)
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現場から「ブレストできない」の悲鳴

 「時間と場所を共にしてお互いのアイデアを積み上げるブレーンストーミングができなくなった」(自動車メーカーの事業・商品企画担当者)。日経Automotiveが実施したアンケートに寄せられた意見の1つだ。新型コロナウイルスの感染拡大を機に始まった在宅勤務。その難しさが浮き彫りになった。

 そんな中で、いち早く動いたのがホンダだった。課題やテーマを共有しながらざっくばらんに話し合うことで物事の本質を探し出すワイガヤ。その本家本元がホンダで、3日3晩の合宿で1つのテーマについて徹底的に議論するという文化を、同社創業者の本田宗一郎氏が中心になって構築した。

 ワイガヤの大前提は、膝を突き合わせて意見をぶつけ合うこと。まさに、密集・密接・密閉の「3密」状態になる。たとえホンダの根幹をなす企業文化だとしても、コロナ禍では続けるのは難しい。

 それでも仲山氏は、「価値観が大きく変化するアフターコロナでは、変化に追従するためにワイガヤを実施し続けることが大切」と訴える。同氏の上司であるホンダ知的財産・標準化統括部標準化推進部統括部長の別所弘和氏によると、「ワイガヤを中断するという選択肢はなかった」という。「アフターコロナ」時代のワイガヤの形を求めて、ホンダの試行錯誤が始まった。