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 融点を自在に決められるシャープの蓄冷材「適温蓄冷材」が、物流に革新をもたらすかもしれない。首都圏を中心に展開するパルシステム生活協同組合連合会が、青果配送用の蓄冷材として全面採用する。既に導入を開始しており、2021年6月までに既存の蓄冷材と入れ替える。青果に適した融点の蓄冷材を使うことで、品質劣化を防げるほか、消費電力を大幅に削減できるという。

 パルシステムでは、4~11月の期間、青果を保冷配送している。従来は、主成分が水で、融点が0℃前後(-1~+1℃)の蓄冷材を使っていた。この蓄冷材が、配送用の箱(通い箱)の中で青果と直接触れると、青果の温度が下がって凍結や変色といった低温障害が発生し、傷んでしまうという課題があった。

 シャープの蓄冷材も主成分は水だが、氷の結晶構造を変える化合物を添加しており、化合物の種類や量を調整することで、融点を-24~+28℃の範囲で設計できる。しかも、固体の状態から融点に達してもすぐには液体にならず、融点温度を保ったまま固体と液体の中間的な性質で振る舞い、周囲の熱を奪っていく(いずれ液相に移行する)。「液晶の制御技術を応用した蓄冷材」(シャープ研究開発事業本部材料・エネルギー技術研究所課長の内海夕香氏)である。

パルシステムが新たに採用したシャープの蓄冷材。青果の配送に使う。(写真:日経クロステック)
パルシステムが新たに採用したシャープの蓄冷材。青果の配送に使う。(写真:日経クロステック)
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 パルシステムは、融点を+12℃に設定した蓄冷材を採用する。これによって、青果の品質劣化を防げる。従来は蓄冷材と青果の接触を避けるために緩衝材(マット)を挿入していたが、この緩衝材が不要になる。加えて、従来は低温下で品質が劣化しやすい大葉など一部の青果は保冷配送できず、別に配送する必要があったが、今後は一緒に保冷配送できるようになる。

手前が既存の蓄冷材と緩衝材、奥が新蓄冷材。既存の蓄冷材に対して新蓄冷材の大きさは半分程度である。従来は1つの通い箱に1個の蓄冷材を入れていたが、今後は2個入れる。(写真:日経クロステック)
手前が既存の蓄冷材と緩衝材、奥が新蓄冷材。既存の蓄冷材に対して新蓄冷材の大きさは半分程度である。従来は1つの通い箱に1個の蓄冷材を入れていたが、今後は2個入れる。(写真:日経クロステック)
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 さらに、蓄冷材の凍結にかかる時間や消費電力を大幅に削減できる。凍結時間は、既存の蓄冷材は18時間以上だったが、新蓄冷材は約12時間で済む。蓄冷材を全て入れ替えると、消費電力量は約40%、二酸化炭素(CO2)排出量は年間約2000トン削減できる見込みだという。「既存の蓄冷材を凍結させるには、凍結機の庫内温度を-25℃に設定し、庫内送風のための風量も最大にしていたが、新蓄冷材は-20~-15℃で済みそうだ」(パルシステム)。凍結機は既存のものを引き続き利用する。