全2197文字
PR

 銀行間決済を担う「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」が変革のときを迎えている。

 40年にわたって手つかずだった銀行間手数料を見直す方針が固まり、さらに3メガバンクやりそな銀行は2020年8月6日、小口決済を対象にした新たな決済インフラの構築に乗り出すことを発表した。「硬直的で高コスト」という全銀システムの課題解消に向け、銀行業界が重い腰を上げた格好だ。しかし、関係者からは「小手先の改革でお茶を濁し、早期の幕引きを図っているのではないか」との疑念も漏れる。

全銀システム改革は待ったなし、のはずが…

 政府が2020年7月に閣議決定した「成長戦略実行計画案」には、3つの全銀システム改革が盛り込まれた。「銀行間手数料の引き下げ」「多頻度小口決済を想定した新決済システム(全銀LITE)の構築」「キャッシュレス決済事業者などによる全銀システムへの参加」――である。いずれもキャッシュレス決済の普及を加速させるのが目的で、銀行以外の決済事業者に立ちはだかる障壁を取り除く狙いがある。

 全銀システムを運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は、全銀システムの改革を担わせるべく2020年5月に発足させた「次世代資金決済システムに関する検討タスクフォース」の席上で、銀行間手数料の仕組みを撤廃し、新たなスキームへの移行を検討すると公表している。2020年11月から2021年2月にかけて新スキームにおける費用などを決め、同年3月以降に導入する。銀行間手数料の引き下げについては、2020年6月16日に開かれた未来投資会議で安倍晋三首相が言及するなど既定路線だ。

 一方でサプライズとなったのは、3メガバンクとりそな銀行、埼玉りそな銀行の5行が連名で2020年8月6日に発表した新たな決済インフラ構想だ。1000以上の金融機関が参画する「J-Debit」基盤を活用し、少額送金に特化した決済インフラの構築を検討する。当初は各行のバンキングアプリや銀行系キャッシュレス決済サービスである「J-Coin Pay」などとの接続を見込む。

少額送金に特化した新たな決済インフラ構想を打ち出した大手行
少額送金に特化した新たな決済インフラ構想を打ち出した大手行
[画像のクリックで拡大表示]

 将来的には、銀行以外の決済事業者が手掛けるサービスとも連携できるように検討を進めるとする。Fintech協会の神田潤一理事は、「基本的には歓迎できる動き。FinTech事業者にも広がり、引いてはユーザー利便が高まることを期待したい。ただし、中長期的な議論も続けていくべきだ」と語る。