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 アパレルのシェアサービス運営ベンチャーのエアークローゼットが、人工知能(AI)とデータを駆使して業務効率の改善に成果を上げている。利用データを基に商品の需要や返却率を予測し、在庫管理や物流倉庫の人員配置に役立てる。利用者に直接関わる「表(おもて)」のサービス品質改善に加え、一見すると地味な「B面」でのAI活用で競争力を高める。

 「単なるファッションレンタル業ではなく、ITを徹底活用したファッションテック企業を目指している。中でもAIとデータサイエンスは経営に不可欠な技術分野だ」。天沼聡社長兼最高経営責任者(CEO)はこう強調する。

 同社がAIによるデータ活用に取り組んでいる代表的な分野が、顧客ごとに適切な洋服の組み合わせを提案する「スタイリング」の品質向上だ。具体的には顧客へ洋服の組み合わせを提案するスタイリスト向けのレコメンドエンジンである。

 顧客の顔写真や全身の写真、体形のデータなどを基に、潜在的に似合う洋服の組み合わせをスタイリストに提案する。スタイリストはAIによる提案を参考にして、最終的な組み合わせを顧客に提案する。ほかにも顧客の好みとスタイリストの得意分野を基に、顧客と相性の良いスタイリストを選んでマッチングする技術も開発している。

サービスに関して作成・収集するデータの例。スタイリングデータのほかにも販売や顧客データ、クリーニングに関するデータと幅広い
サービスに関して作成・収集するデータの例。スタイリングデータのほかにも販売や顧客データ、クリーニングに関するデータと幅広い
(出所:エアークローゼット、以下同)
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裏方の強固な業務基盤が参入障壁に

 顧客へのサービスに直接関わるこれらの分野を「表(おもて)」のAI活用とすれば、同社自身の業務を効率的に運用する「裏のAI活用」(天沼社長)がある。洋服の仕入れや在庫管理、保管、メンテナンスなどだ。

 表だけでなく裏方の業務効率向上に力を注ぐのは、コスト構造の強化が競合他社と一線を画すのに欠かせないと考えているからだ。同社の基本的なサービスはアパレル企業から洋服を仕入れて、毎月定額で利用者へ貸し出すというもの。ファッション業界の企業にとっては、参入しやすく見えるかもしれない。しかし需要の予測から仕入れ、返却された商品の保管やクリーニング、配送まで、シェアサービス特有の業務プロセスや人員確保手段を確立するのは容易ではない。実際、洋服のシェアサービスに参入したものの、撤退した大手アパレル企業もある。「裏側の業務効率化が当社の事業における参入障壁になる」(天沼社長)。

エアークローゼットのサービスの流れ。上部が示す洋服の在庫管理、保管、メンテナンスなどが「裏」の業務となる
エアークローゼットのサービスの流れ。上部が示す洋服の在庫管理、保管、メンテナンスなどが「裏」の業務となる
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