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 「電気自動車(EV)の所有コストは西欧ではディーゼル車に近い」。2020年6月30日に開催されたフランスGroupe PSA(グループPSA)による「CITROEN(シトロエン)」ブランド新型EV「e-C4」の発表会でこう語ったのが、シトロエンブランドCEO(最高経営責任者)のVincent Cobee氏だ(図1)。欧州では既に、ドイツVolkswagen(VW、フォルクスワーゲン)が総所有コスト(TCO)でエンジン車に優位に立つ新型EV「ID.3」を同年9月に納車開始する予定(図2)。EVの低価格化が加速している。

図1 グループPSAのシトロエンブランドの新型EV「e-C4」
図1 グループPSAのシトロエンブランドの新型EV「e-C4」
ハッチバックタイプのEV。50kWhの電池を搭載し、WLTPモードの航続距離は350km。(出所:Groupe PSA)
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図2 VWの新型EV「ID.3」
図2 VWの新型EV「ID.3」
ハッチバックタイプのEV。普及グレードの「ID.3 Pure」は48kWh(推定値)の電池を搭載し、WLTPモードの航続距離は330km。(出所:Volkswagen)
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 エンジン車とTCOで肩を並べつつあるEV――。その満充電時の航続距離は、欧州のWLTPモードで300km台だ。具体的には、VWの「ID.3 Pure」が330km(電池容量48kWh、推定値)、シトロエンのe-C4が350km(同50kWh)である。

 欧州の新世代のEVは、このWLTPモードで300kmが1つの目安になっている。そう分析しているのが、PwCコンサルティングでディレクターを務める轟木光氏だ。「EVは高速走行時の電池消費が激しくなる。航続距離が300km以上あれば、アウトバーンを200kmくらいは走れる」(同氏)。今後、アウトバーンの途中に急速充電ステーションが満遍なく整備されれば、EVを安心して使えるようになる。

 EU(欧州連合)のしたたかな点は、そうした急速充電ステーションの整備をEU全体で進める支援策を講じていることだ。EUの欧州委員会は19年12月11日、2050年までにEU域内の温暖化ガスの排出量をゼロにするという目標に向けた政策「欧州グリーンディール(European Green Deal)」を発表、20年1月14日にはその実現のために今後10年間で1兆ユーロ(1ユーロ=123円換算で123兆円)を投資する「欧州グリーンディール投資計画(The European Green Deal Investment Plan)」を発表した(図3)。その投資対象の1つが、急速充電ステーションなどの公共充電設備である。

図3 欧州グリーンディールを発表した委員長のフォン・デア・ライエン氏
図3 欧州グリーンディールを発表した委員長のフォン・デア・ライエン氏
(出所:EC-Audiovisual Service、撮影:Jennifer Jacquemart)
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