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 「かなりショックな結果」(川崎重工業)、「低調な実績」(三菱重工業)──。日本の重工業3社の2021年3月期(2020年度)第1四半期(2020年4~6月;1Q)決算は厳しいものとなった。全社がそろって赤字に転落。日本の製造業の中でも、特に新型コロナウイルスの影響が深刻な業界となっている。

三菱重工業の2020年度1Qの業績
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三菱重工業の2020年度1Qの業績
(出所:日経クロステック)

 三菱重工業の事業損益†1は713億円の赤字。川崎重工業の営業損益は206億円の赤字で、「四半期決算を発表し始めた2004年以来、最大の赤字幅」(同社)となった。IHIの営業損益は92億円の赤字と2社に比べると損失額は少ないものの、売上高は22.3%減と、三菱重工業の15.4%減と川崎重工業の14.3%減に比べて大きく落ち込んでいる。

†1 事業損益=売上高-売上原価-販売費および一般管理費-その他の費用+持ち分法による投資損益+その他の収益。その他の費用とその他の収益は、受取配当金や固定資産売却損益、固定資産減損損失などで構成される。三菱重工業は営業利益ではなく事業損益を使う。

 最大の減益要因は、やはり航空関連事業だ。旅客需要の急減と航空会社(エアライン)の経営状況の悪化により、民間航空機用エンジンや部品(機体部品)、アフターサービスの需要が“蒸発”した。しかも、当初の見通しよりも1Qの実績は悪化している。3社のうち最も大きな赤字(事業損失)を出した三菱重工業の航空・防衛・宇宙セグメントを見ると、民間航空機用部品の売り上げは、当初計画に対して約50%減。2020年5月時点では10~30%減と見ていたが、より大きな減収幅となった。民間航空機用エンジンも、5月時点で見通していた35~55%の減収幅のうち、最悪のケースである55%減まで売り上げが落ちている。

川崎重工業の2020年度1Qの業績
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川崎重工業の2020年度1Qの業績
(出所:日経クロステック)

 川崎重工業の航空宇宙システムセグメントは175億円の営業損失を計上。IHIの航空・宇宙・防衛セグメントは47億円の営業損失となった。しかも、先行きの不透明感も増している。旅客需要の低迷が一層深刻になるという見方が出ているからだ。「国際航空運送協会(IATA)による回復予想が2024年と、期初の当社の回復予想から1年先に延びた」(IHI)。航空関連事業は当面、防衛省予算の安定した需要や、比較的回復が早そうな国内の旅客需要の復活に期待するしかない。国際的な旅行・航空需要が回復期を迎えるまでの3~4年間を耐えられるかは、他の事業部門でいかに支えるかにかかってきそうだ。

IHIの2020年度1Qの業績
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IHIの2020年度1Qの業績
(出所:日経クロステック)

減益688億円で三菱重工の足を引っ張るスペースジェット

 中でも「弱り目に祟(たた)り目」の状態にあるのが、三菱重工業である。民間航空機用エンジンや部品といった既存事業の減収に加えて、小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ、以下スペースジェット)」事業の開発費負担が同社に重くのしかかっている。1Q決算でも、スペースジェット事業が688億円の減益要因となり、三菱重工業全体の業績を依然として大きく引き下げている†2

†2 688億円の減益要因のうち、200億円がスペースジェットの開発費で、残りはカナダのボンバルディアから小型ジェット機「CRJ」事業を買収したことに伴うのれん減損などの費用。

 2020年8月12日執筆時点では、スペースジェット量産初号機の顧客への納入予定時期は2021年度以降と、同社が2020年2月に発表した時から変更はない。だが、リストラによってスペースジェットの開発費や人員の半減を決定した上、型式証明(Type Certificate=TC)取得に向けた飛行試験を行う米国でも新型コロナの感染が拡大しており、TC取得が計画通り進むかどうかが見えない状況にある。

依然として足を引っ張るスペースジェット事業
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依然として足を引っ張るスペースジェット事業
三菱重工業の1Qの事業利益の増減要因を示した。スペースジェット事業が688億円の減益要因となっている。(出所:三菱重工業)