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 停止時からの発進や低速走行時にアクセルペダルを踏み間違えて急加速したことによる事故の発生が後を絶たない。こうした事故を減らすためトヨタ自動車は、新たな「急加速抑制システム」を開発した。他社を含めてこれまでのシステムは、前後バンパーに搭載した超音波センサーを使い、ペダルを踏み間違えたときの急加速を防ぐ。ただ、壁などの障害物がある場合にしか対応できなかった。トヨタの新システムは超音波センサーを使わず、障害物がない場合でも作動する。センサーを使わないシステムの実用化は、日本の自動車メーカーでは初めて。トヨタはどのようにして対応したのか。その取り組みを追う。

 トヨタの新システムには、新型車向けと既販車向けの2つがある。このうち新型車向けシステムは、超音波センサーを使う同社の現行システム「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」に、今回の新システムの機能を追加する形になる。自動ブレーキとは別のシステムとして作動する。

 新型車向けシステムは、部分改良して2020年7月に発売したハイブリッド車(HEV)「プリウス」とプラグインハイブリッド車(PHEV)「同PHV」に初めて搭載した。今後、搭載車種を増やす計画だ(図1)。

「プリウス」の部分改良車
図1 新システムを搭載した「プリウス」の部分改良車
20年7月に発売した。同時に発売した「プリウスPHV」も同じシステムを搭載した。(出所:トヨタ自動車)
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 既販車向けのシステムも、超音波センサーを使う現行の後付け装置に、新システムの機能を追加する形になる。今後、新機能を搭載した後付け装置の販売を強化する注1)

注1)新機能を搭載した後付け装置「踏み間違い加速抑制システムII」についてはプリウスの旧型車(15年12月~20年6月に生産し、ICSを装着していない車両)から対応を始め、「サイ(SAI)」(09年10月~18年2月の生産車)、「クラウン」の旧型車(08年2月~12年12月の生産車)、「マークX」(09年10月~16年11月の生産車)にも対応させる。

超音波センサー使うシステムだけでは対応できない

 トヨタが今回の新システムを開発した背景には、超音波センサーを使う従来の急発進抑制システムだけでは、ペダル踏み間違い事故を防げないという事情がある。実際にペダル踏み間違い事故は、障害物がない環境でも起こっている。

 同社先進技術開発カンパニー先進技術統括部で安全技術企画グループ主査の池田幸洋氏は、「超音波センサーを使う従来システムで、ペダル踏み間違い事故の約7割(障害物がある場合)には対応できるが、残りの約3割(障害物がない場合)に対応するには新たな技術開発が必要になる」という。(図2)。

踏み間違い事故の低減効果
図2 踏み間違い事故の低減効果
超音波センサーを用いたシステムで踏み間違い事故の約7割を低減できるが、残りの約3割を減らすには新たな技術開発が必要になる。事故の低減効果を調べた対象車種は、上級ミニバン「アルファード/ヴェルファイア」とプリウス(保険会社調べ。調査対象は約6万3000台で、そのうち約2万6000台が超音波センサーを用いた急加速抑制システム搭載車)。ユーザーの申告から、踏み間違いと判断したケースを抽出した。(出所:トヨタ自動車)
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 従来システムでは対応できない約3割の踏み間違い事故を減らすためトヨタは、今回の新システムを開発した。超音波センサーを使わずに、ビッグデータを活用した。具体的には、車載ECU(電子制御ユニット)から取得した実際の事故発生時のデータと通常走行時のデータを利用する。