「当社は2020年6月の定時株主総会を、初めてバーチャル株主総会形式で開催した。ネット経由の質問を受け付けつつ滞りなく進行でき、手応えを感じた。いろいろと改善しながら来年以降も継続したい」――。
こう明かしたのはヤフーなどの持ち株会社であるZホールディングス(HD)の尾崎太法務統括部株式企画部部長だ。尾崎部長は2020年8月21日、企業の株主総会担当者向けのオンラインセミナー「バーチャル株主総会成功のポイント」(コインチェック主催)で登壇した。
「従来通り開催するわけにはいかない」
ZHDは6月の定時株主総会に先立つ2020年3月17日にも、LINEとの経営統合の承認を株主から得るために臨時株主総会を開いている。既に新型コロナウイルス感染拡大が深刻な状況だったが、大規模施設の東京国際フォーラム(東京・千代田)に株主を集めて開催した。
「コロナ禍の状況では6月の定時株主総会を従来通り開催するわけにはいかないと痛感した。臨時株主総会が終わった瞬間から準備を始めた」。尾崎部長はこう振り返った。
実際に6月23日に開いた定時株主総会は「ハイブリッド型バーチャル株主総会」の形式で開催した。ZHDのセミナールームをリアル会場とし、株主が集まった。ただし、新型コロナ感染拡大防止のため、株主にはなるべく来場しないよう事前に呼びかけた。ZHDの役員も大半がリアル会場に臨席せず、ネットを通じてリモート参加した。
ネット経由でも質問や議決権行使を可能に
ZHDは以前から株主総会のネット生中継を提供していたが、株主はその場で議決権を行使できなかった。今回は、来場自粛を呼びかける代わりに、来場しない株主もネット生中継を見ながら株主の権利としての質問権や議決権を行使できる「インターネット出席」の独自システムを新たに用意した。
具体的には、株主はあらかじめ配布された株主番号と郵便番号、保有株数を入力して専用Webサイトにログインしておく。株主総会の生中継が始まると、「1人1問200文字以内」という制約はあるものの質問を入力でき、会社側がその場で回答するというものだ。
議案に対する賛否は専用Webサイトでボタンを押す形で意思表示する。この内容は正式な議決権行使として扱われる。株主の出席者は会場で18人、ネットで92人だった。92人のうち80人が議決権を行使した。2019年は会場に1751人が来場したが2020年は会場への来場者数を前年の1パーセントに抑えつつ、ネットの活用で株主の権利行使の機会を確保した格好だ。