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 東芝データと病院経営支援を手掛けるエムスリーグループのグループ会社シーユーシー・アイデータはデータを活用し、生活習慣病を予防する目的の健康関連サービスでタッグを組む。両社は新サービスにおける協業方針について基本合意に達したと2020年7月に発表した。サービス開始は2021年4月ごろを予定している。

 既にデータを活用した生活習慣病を予防するサービスはあるが、今回の取り組みでは、人々の購買活動の記録であるレシートのデータから食材や飲食情報を取得するのが新しい。東芝データが集める、レシートを基にした「食」関連のデータと、シーユーシー・アイデータが収集する健康診断のデータを連携させる。企業や健康保険組合向けに従業員の生活習慣病リスクをAIによって予測、希望者から健康相談を受け付けるサービスを検討する。

「スマートレシート」の記載事項から収集

 生活者の食に関するデータは東芝データが取得する。スーパーで購入する食品情報や飲食店での飲食情報などで、東芝の別の子会社でPOS(販売時点情報管理)レジ最大手である東芝テックが手掛ける電子レシートサービス「スマートレシート」を活用して取得する。

 スマートレシートは、これまで紙で渡されていたレシートをスマートフォンで表示できるサービス。同名のスマホアプリに表示されるバーコードを、店に設置したPOSレジで読み取らせることで、スマホ上にレシートを表示する。会員数は2020年7月31日時点で約26万5000人になる。

 レシートの印字項目をそのままデータとして収集するため、利用者が購入した肉や魚、水といった種類が確認できる。ただ、購入した量まで判別できるかは利用店舗次第だという。アプリにログインするためには氏名や電話番号などを登録する必要があるが、シーユーシー・アイデータとの協業サービスではこれらの情報は収集しないという。

スマホ上で表示したスマートレシート。ここから個人の食の情報を収集する
スマホ上で表示したスマートレシート。ここから個人の食の情報を収集する
(出所:東芝データ)
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 一方シーユーシー・アイデータは全国の健康保険組合に所属する被保険者数百万人から健保データを収集する予定としている。データは40~79歳までの人が対象でメタボリックシンドロームに着目した「特定健康診査」において測定する血圧や血中脂質、肝機能の値などだ。これらの健診データに加え、既往歴や服薬歴など通常カルテに記載するデータにも踏み込んで収集したいとしている。

 新サービスは、シーユーシー・アイデータが健康保険組合から業務委託を受け、従業員に対して健康推進のためのアドバイスなどを提供して支援するという内容を想定している。収集した情報からAIによる健康スコアリングを実施するとともに、シーユーシー・アイデータと提携する医療機関の医師に相談することが可能だという。

 シーユーシー・アイデータは東芝データから食に関するデータを受け取り、自社が収集する健康診断のデータと共に、現在構築中の「iD-Healthプラットフォーム」上で一元管理するという。同プラットフォームの詳細は明らかにしていないが、「医療機関と民間事業者がデータを保管する際に準拠しなければならない3省3ガイドラインに準拠している。データレイク領域、共有領域、パブリック領域を明確に分けつつデータをシームレスに連携できるシステムを構築している」(シーユーシー・アイデータ)という。

東芝データとシーユーシー・アイデータが予定する新サービスの構想
東芝データとシーユーシー・アイデータが予定する新サービスの構想
(出所:シーユーシー・アイデータ)
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