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 EC(電子商取引)サイト構築支援ベンチャー、カナダのショッピファイ(Shopify)が日本市場攻略に本腰を入れ始めた。日本最大のECモール「楽天市場」との販売チャネル連携を皮切りに、オンラインとオフラインをつないだ店舗運営支援などのサービスを日本でも始める。「アマゾンキラー」とささやかれるショッピファイがパートナーに楽天を選んだ背景には、必然的な理由があった。

 ショッピファイの日本法人Shopify Japanは2020年4月7日、楽天市場と販売チャネル連携を発表した。Shopifyを利用しているEC事業者はShopifyの管理画面から、楽天市場向け店舗の商品登録や在庫管理などの店舗運営業務を実行できる。

 楽天市場との連携は日本における事業拡大策の第一歩だ。「日本でのパートナーシップ強化を進める」。Shopify Japanのマーク・ワング社長はこう強調した。ECモールや大手の小売業者、物流、決済などパートナーを広く探し、EC事業者の販売機会を増やす。

 オンラインとオフラインを問わずに販売できるようにするための環境整備も急ぐ。現在日本向けに取り組んでいるのがPOS(販売時点情報管理)向け新機能の開発だ。オフラインとオンラインそれぞれのデータ活用支援機能を拡充するなどして、両店舗をよりスムーズに連携できるようにするとみられる。

 日本での勢力拡大の背景にあるのが業績の急成長だ。2019年の売り上げは前年比31%増の15.7億ドル、2020年4~6月は前年同期比97%増の7.1億ドルだった。新型コロナ禍で実店舗の客離れに見舞われた小売業者がオンライン販売に移行し、需要が急増したと見られる。

Shopifyは毎年2桁成長を続けている。
Shopifyは毎年2桁成長を続けている。
(日経クロステックが作成)
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 「D2C(Direct to Consumer)」と呼ぶEC形態の拡大も、同社の業績を後押ししているようだ。D2Cは製品のメーカーが、自前のECサイトで消費者へ直接販売する形態を指す。自前サイトを使えば、Amazon.comや楽天市場などへの手数料を払わずに済む。顧客の購買データを直接集めて、商品開発やマーケティングに活用できる点も利点だ。通常、モールを通して販売すると購買データは出店事業者に渡らず、モールの所有物となる。

目指すは「どこでも売れる」状態

 D2C拡大の潮流に乗って成長してきたショッピファイが、日本進出のパートナーとして間接販売支援の最大手である楽天と組んだ。一見すると同社の戦略に矛盾するように思える。

 同社が見据えるのは直接か間接か、オンラインかオフラインといった形態を問わず、Shopifyで店舗を作りさえすればどこでも販売できる状態だ。「ラグジュアリーブランドは一等地にブランドの世界観を表現した旗艦店を構えるが、百貨店にもテナント出店して販売チャネルを広げる。我々は潜在的な顧客がいるあらゆる場所で販売できるようにする」。ワング社長は同社の戦略をこう説明する。

 ブランドならではの世界観を表現できる自前のECサイトでは、小規模事業者でもファンを増やしやすい。だが多くの競合がひしめくモールではゼロからブランドを確立するのが難しい。小規模事業者にとっては、モールで事業を続ける上で必要な売り上げなどの要件を達成することが難しい場合もある。