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 2020年7月末、三菱ケミカル茨城事業所の定期修理が完了した。法定検査と設備の修理や改造を兼ねた数年に一度の大規模作業だ。約2カ月の期間中、協力会社を含めてのべ10万人以上、ピーク時には1日3千人以上が作業に関わる。

 今年は新型コロナウイルスの影響により例年と異なる状況で実施を強いられることになった。感染リスクがあるため密集できず、現地に来られないメンバーもいる。そんな中でも無事に終えられた要因は、コロナ禍以前から準備を進めてきた2つのデジタル化の取り組みにある。

作業の受付にRFIDを活用

 1つ目がRFID(無線自動識別)の活用だ。RFIDとはRFタグという媒体に記録された情報を、電波を通して読み取る仕組みをいう。

 点検を開始する際、作業を担当する協力会社は、受付へ作業計画書を渡し、確かに三菱ケミカルが事前に承認した作業であることの確認を受けて押印をもらう。複数の受付をさながらスタンプラリーのように巡り、作業完了時にも同じことを繰り返す。1日に数千人が集まり数百件の工事が行われる定期修理だ。長い待機列ができ、作業員が受け付けから工事を開始するまでに30分程度かかっていた。

 高圧ガスなどを扱う都合上、一つ間違えれば重大な事故にもつながる点検において作業計画書の確認は欠かせない。だが30分のロスは三菱ケミカルにとっても協力会社にとっても痛手だ。何より待機列は3密につながり、コロナ禍においてリスクとなる。

 三菱ケミカルは作業計画書に貼ったRFタグを読み取るという妙手で、受け付けに要する時間を大幅に削減した。作業計画書は事前に三菱ケミカルが作成するが、承認された書類にはRFタグが入ったシールを添付した。当日はそれをリーダーで読み取ることで承認済み作業であることを一瞬で確認できるようになった。受付待機の列と無駄な時間が無くなった。

 今まで続けてきた押印の廃止に反対の声は少なかったという。三菱ケミカル生産技術部DX推進グループの青山貴征マネジャーは「昔はハンコがマストという空気があった。3年ほど前からDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進し始め、今では社内でデジタルを信用する雰囲気になってきた」と振り返る。