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 クルマの車内センシングにおいて、ミリ波技術を使用したレーダーセンサーは高い精度と柔軟性に加え、小型・省スペースで目立たないことや車内に簡単に搭載できるといった特徴がある。車外用のレーダーセンサー技術の応用では、既に自動車メーカーが大きな成果を上げているが、同センサー技術は車内の安全を効果的に確保する用途にも利用できる。最近特に注目されているのが、乗員検知への応用である。

 先進運転支援システム(ADAS)では、センシング技術を使用して車両や歩行者、自転車、建物など自車の周囲の状況を把握する。この技術は車内でも、子供の置き去り警報やシートベルト着用警告、エアバッグ展開などにおいて精度や信頼性を向上できる。

 子供の置き去りなど車内の人を検知する用途では、センサーの検知精度は特に重要である。安価で簡単に搭載できるミリ波技術を用いたレーダーセンサーは、有効なソリューションといえる。

 クルマに乗っている人の安全を確保するための車内センシング技術には、様々な用途があるが、最近、子供が車内に置き去りにされたことによる事故が多発しているため、その防止策は自動車メーカーの喫緊の課題になっている(図1)。

車内に置き去りにされた子供
図1 車内の子供の置き去りを防ぐ
(出所:Texas Instruments)
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目視できないものが見えるミリ波レーダー

 この問題に取り組むため、欧州の自動車アセスメントプログラム「Euro NCAP」の試験項目に、子供の置き去り検知システムが追加されることが決まった。これを受けて早ければ2020年にも、複数の自動車メーカーが実装を始める予定である。

 このシステムは簡単に言うと、子供が車内に置き去りにされていることを運転者などに知らせるものである。(1)後ろ向きに取り付けたチャイルドシートに寝かせた場合のように、運転者などから見えない子供の検知が可能であること、(2)子供と同程度の大きさのモノと子供を区別できること──などがシステム開発の目標となっている。

 最近の一部のクルマには、カメラと座席用の重量センサーを利用して人を検知するシステムが搭載されているが、現在の技術では子供の置き去りなどを検知することに限界がある。例えば、後ろ向きのチャイルドシートに寝かせていたり、毛布をかぶっていたりする子供は、カメラで検知できない場合がある。

 カメラの検知性能は、周囲の明るさ(光の強さ)にも影響される。光が強すぎても弱すぎても性能が低下する。またカメラの場合には、モーションセンシングでは問題にならないようなセキュリティーやプライバシー上の懸念がある。

 また、従来の車内センシング技術には、美観やデザインの問題もある。カメラはある程度の大きさがあるため、設置するには一定のスペースが必要になる。クルマの車内寸法やレイアウトによってはカメラの装着に制約が出て、検知領域の有効性などが問題になる可能性がある。

 さらに、スクールバスなどの大型車両の場合は、複数のカメラを設置しても車内に死角が生じる可能性がある。その結果、眠っている子供の存在を運転者が見落とし、降りるべきところで子供が降りられなかったということが起こり得る。

 車内モニタリングでカメラが有効となる状況もあるが、ミリ波技術を使うレーダーセンサーは、カメラよりも車内の広い範囲で子供を検知できる。ミリ波はプラスチックや石膏(こう)ボードといった壁材や衣類など各種材料を通過するため、バスの後部に隠れていたり、毛布をかぶっていたりする子供の検知も可能だ。