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ドームの電波環境に苦労、半分は有線で接続

 今回の応援企画でアスラテックを悩ませたのがドームの電波環境の悪さだ。今回、ダンスを演じる各20台のSpotとPepperはPCから直接動きを制御しており、何らかの通信手段で接続する必要がある。通常ならWi-Fi(無線LAN)を使うところだが、既に多数の電波が飛び交っているドーム内の電波環境では本番中に通信が途切れる心配があった。そこで同社は、20台のうちの半数をPCと有線で接続した。万が一の際にも、最低でも半数のSpotがダンスを継続できるようにするためだ。

福岡PayPayドーム
福岡PayPayドーム
開閉式の屋根が開いた様子。(出所:PIXTA)
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 20台のSpotは全部が同じダンスを踊るのではなく、3つのグループに分かれて異なる動きを担当している。制御用のPCも3台あり、それぞれが複数のSpotに接続するシステム構成になっている。この3グループ間の同期は「手動ではないがそれに近い方法を使っている」(アスラテックの今井氏)という。また、場内の放送はドーム側が担っているため、「流れてくる応援歌のタイミングにロボット側で合わせている」(今井氏)

 8月以降のホークス戦では試合前や3回表終了後に、グラウンド内にSpotが登場し、練り歩いたり走ったりする姿を見せている。これは人による遠隔操縦で実現しており、ダンスとは別の機体を使っている。電波環境が良好でないことや安全面の理由などから自律歩行は困難と判断した。Spotは本体に5台のステレオカメラを備えているが、これらを生かした自律走行の披露はなかなか難しいようだ。

 長らく話題先行だったSpotは2020年6月から米国でオンライン販売を始めたばかり。1台約800万円(7万4500米ドル)という高価格もあり、海外でもまだ具体的な活用事例は少ないようだ。国内でも建設会社などによる試験導入を除くと、本格的な導入事例もまだ聞こえてこない。ソフトバンクロボティクス自らが手掛けているとはいえ、今回の応援企画は多数のSpotの本格的な運用としては恐らく国内で初めての事例になる。

 Spotのような4脚ロボットで一体何ができるのか、取り扱いの注意点や長期的な運用の安定性はどうなのか。今回の応援企画はSpotを販売するソフトバンクロボティクスや技術面をサポートするアスラテックにとっても貴重な経験の蓄積になっているようだ。今後、このような事例が増えていくことで、4脚ロボットの真価は徐々に見えてくるだろう。