メガバンクやJR東日本などが参加する「デジタル通貨勉強会」で検討中のデジタル通貨の全体像が見えてきた。民間銀行が企業や個人に対して発行し、デジタルウォレットで管理する。スマートコントラクト機能を充実させることで、企業における利用ニーズに応える方針だ。2020年10月には最終報告をまとめる。早ければ1~2年後にも、最初のデジタル通貨が発行されるかもしれない。
同勉強会が議論してきたデジタル通貨は、消費者や企業から現預金を受け取り、民間銀行が発行する形に落ち着きそうだ。デジタル通貨の信用力を裏付ける方法にはいくつか候補がある。デジタル通貨を払い出した額と同じだけの現金を銀行が分別管理しておく、発行額相当を日銀当座預金から別勘定にして担保にする、といった方法だ。いずれにせよ、CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは別の枠組みとなる。
デジタル通貨を利用する個人や企業にとっては、デジタルウォレットが今の銀行口座と同様の役割を果たす。原則、取引者間で直接、送金や決済ができるようになるとみられる。「Suica」や「PayPay」といった既存のキャッシュレス決済サービスとも共存させる方針だ。
2階層で基盤を構成
デジタル通貨勉強会の事務局を務めるディーカレット代表取締役社長の時田一広氏は、「事業会社からの期待が大きい」と手応えを語る。デジタル通貨のユースケースについて議論を重ねた結果、事務コストの軽減などにつながることへの期待が高まっているという。鍵を握るのがスマートコントラクト機能だ。
デジタル通貨の基盤は2階層で構成する。1階層目は、全ての利用者に関係する「共通領域」だ。デジタル通貨の移転といった基本機能を担う。デジタル通貨を発行する各銀行が構築する見込みである。2階層目は「付加領域」。事業者間における特定の取引を自動化するスマートコントラクトなどを実装する。