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 「画像分野における深層学習(ディープラーニング)の登場時と同じインパクトを感じた。いずれ自然言語処理の必須技術になるとみている」。NTTデータ技術開発本部AI技術センタ課長の野村雄司氏は「BERT(バート)」に対して、こう期待を抱く。

(出所:NTTデータの資料を基に日経FinTech作成)
(出所:NTTデータの資料を基に日経FinTech作成)
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 BERTは自然言語処理に特化したAI(人工知能)技術で、米Googleが2018年に公表した。多階層のニューラルネットワークを使う点で深層学習の一種とみなせるが、「Transformer」と呼ぶニューラルネットを活用。文章の中で離れた単語間の関係までを把握して「文脈」を考慮した処理を可能にしているのが特徴。「自然文の質問への回答」や「文書の要約」といった処理を人間並みの精度で実行できる可能性があるため、国内外のAI関係者から注目を集めている。

 金融分野でもBERTの応用が本格化し始めた。NTTデータは2020年7月、金融業界向けに特化した「金融版BERT」を開発したと発表。2021年度のサービス開始に向けて、金融機関など5社と実証実験を始める計画だ。コールセンターにおける応対支援、金融関連文書の要約、マニュアルや日報からの情報抽出、りん議書の内容確認といった応用を見込む。

 チャットボット「AMY AGENT」などを提供しているAIベンダーのAutomagiは2019年後半に、ジェーシービー(JCB)の社内マニュアルを対象にBERTを利用した文書検索システムを開発。質問文に対して適切な該当部分を表示するかをテストしたところ、正答率は約8割に達したという。成果を踏まえて、より実践的なシステムでの検証を目指す。Automagi取締役COO(最高執行責任者)の清水孝治氏は「BERTはチャットボットと対になる用途に適すると考えている」と話す。

既存の学習結果を転用できる

 各社がBERTに注目するのは、自然言語処理の精度向上が望めるだけでなく、学習が容易という特徴があるからだ。