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 ドイツDaimler(ダイムラー)の乗用車事業会社であるMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)が、「レベル3」の自動運転車を2021年後半に市場投入する。全面改良して発売する旗艦セダン「Sクラス」に同機能を搭載することを決めた(図1)。まずは、ドイツ国内の高速道路に限定してレベル3の自動運転を使えるようにする。

図1 メルセデス・ベンツの新型旗艦セダン「Sクラス」
図1 メルセデス・ベンツの新型旗艦セダン「Sクラス」
ドイツでは20年12月に納車を開始する。レベル3の自動運転機能を備える車両は21年後半に導入する予定。(出所:メルセデス・ベンツ)
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 20年9月2日に開いた新型Sクラスの発表会で、ダイムラー社長のOla Kallenius(オラ・ケレニウス)氏が導入計画を明かした(図2)。同社はこれまで、レベル3対応車の発売時期を「20年代初頭」として幅を持たせてきた。

図2 ダイムラー社長のオラ・ケレニウス氏
図2 ダイムラー社長のオラ・ケレニウス氏
乗用車などを手掛ける子会社のメルセデス・ベンツのトップも兼ねる。(出所:メルセデス・ベンツのオンライン発表会の映像をキャプチャー)
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 新型Sクラスには、量産する乗用車としては世界初となる「レベル4」の自動駐車機能も採用する。Kallenius氏は「もう運転者は必要ない」と力を込めた。ただし、レベル3やレベル4の自動運転機能が使えるかどうかは、「道路のインフラ環境や各国の規制動向による」(同氏)。このためメルセデスは、自動運転機能を搭載した車両をまずはドイツに限定して導入することにした。

国際基準は21年1月に発効へ

 レベル3の自動運転とは、自動運転システムごとに定めた使用条件(走行環境条件)下において、運転行為をシステム側に委ねることができる「特定条件下における自動運転」のこと。システム側からの引き継ぎ要求があれば、運転車は運転行為に復帰しなければならないが、自動運転中は、スマートフォンの利用や車載ディスプレーの注視といった非運転行為が可能になる(図3)。

図3 レベル3自動運転の様子
図3 レベル3自動運転の様子
自動運転中は、車載ディスプレーを注視したりスマートフォンを使用したりできるようになる。(出所:メルセデス・ベンツ)
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 実用化に向けた法整備では、日本が世界を先導する。20年4月に型式認証を受けた市販のレベル3の自動運転車が日本の公道を走ることが認められた。日本での自動運転レベル3の解禁に続き、同年6月には国際基準が成立している。

 国際連合欧州経済委員会(UNECE)傘下の「自動車基準調和世界フォーラム(WP29)」の専門分科会の1つである「GRVA(自動運転専門分科会)」は20年3月、「自動車線維持システムに関する車両の認可に関わる調和規定」という新たなUN規則の提案書を完成させた。その後、6月のWP29の会合で審議し、国際基準としてUN規則になることが決まった。国際基準は21年1月に発効する見通し。

 自動運転レベル3の国際基準は、高速道路での同一車線内の低速走行を対象としたものになっている。メルセデスが新型Sクラスに導入予定の自動運転機能「DRIVE PILOT」もその方針に沿うように、渋滞などによって混雑した高速道路上で、最高速度を60km/hに制限して同一車線内でブレーキやステアリングなどの運転操作を車両が担うシステムにした。

 新型SクラスのDRIVE PILOTはオプション機能で、レベル3の自動運転を実現できるように専用部品を追加する。