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 ブリヂストンと日本航空(JAL)が共同で、航空機用タイヤの交換時期を予測するIoT(インターネット・オブ・シングズ)システムを開発した。タイヤメーカーにとってはMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の普及などによりタイヤの販売以外の収益基盤確立を迫られている。そんななか、2社はどのように「タイヤIoT」の新規事業を生み出したのか。

エンブラエル170/190型機のタイヤ交換の様子。年間800本消費するとあって、完全摩耗ギリギリまで使い切ることがコスト管理上、重要になる
エンブラエル170/190型機のタイヤ交換の様子。年間800本消費するとあって、完全摩耗ギリギリまで使い切ることがコスト管理上、重要になる
(写真提供:JAL)
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32機×6本のタイヤの完全摩耗日を予測

 ブリヂストンとJALが2020年5月に本格運用を始めたのは、JAL子会社のジェイエア(J-AIR)が運航する小型機、エンブラエル170/190型機(E170/190)のタイヤの交換時期予測システムだ。E170/190がもともと取得していた機体データから抽出するなどして、個々のタイヤの装着時期、着陸回数、接地時の速度、地上走行距離、ブレーキの使用頻度、着陸した空港の気温などのデータを基にブリヂストン側で機械学習。JALが保有する32機に6本ずつ装着しているタイヤのそれぞれについて、安全性が確保できる溝の深さの下限である「完全摩耗」に達する日の見通しを一覧表示する。

 「タイヤの溝の減り具合をJAL側で計測・入力してもらおうとすると膨大な手間がかかってしまう。そうすることなく交換時期に到達するタイミングが分かるのが、今回のシステムの特徴だ」。ブリヂストンで開発プロジェクトの中心的な役割を担った、戸田隼人航空機タイヤエアラインソリューション推進部航空機タイヤエアラインソリューション企画ユニットリーダーは胸を張る。

 航空機用のタイヤは自動車用と特性が異なる点も多い。「万一パンクしても火花が散らないよう(タイヤの骨格部に当たる)内部素材に(商用車用タイヤで一般的な)スチールを使用していない」(Bridgestone T&DPaaS技術企画部Bridgestone T&DPaaS技術企画第1ユニットの松沢和貴氏)。E170/190の場合、機体や乗客、貨物などを合わせて最大45トンの重量を6本のタイヤで支える必要があり、しかも着陸時は接地の衝撃と滑走路の摩擦が重なり、摩耗が不均一に発生する。

 JALの整備の現場も、以前はタイヤに関する悩みを抱えていた。32機のE170/190で消費するタイヤは年間約800本。平均すれば1日2本強のペースだが、実際には「具体的な交換作業の発生日がいつになるか分からず、日によって交換作業が10本になったり0本になったりする」。JALの整備子会社であるJALエンジニアリング 部品サービスセンター羽田生産計画グループの平田彰氏はそう明かす。