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 2020年9月10日、波は穏やか天気は晴れ。この日、ミドリムシ由来のバイオディーゼル燃料を積んだ1艘(そう)のフェリーが大海原へと出航した(図1、2)。同燃料は、バイオスタートアップのユーグレナが開発したのもの。既にバス用途で実績はあるが、船舶への適用は初の試み。八重山観光フェリー(沖縄県石垣市)の定期便に試験導入して実用性を確かめる。環境性と汎用性の高さを武器に、海という新市場を切り開き、2025年の商業化を目指す。

図1 ユーグレナは八重山観光フェリーと組みバイオディーゼル燃料の船舶への試験導入を開始した
図1 ユーグレナは八重山観光フェリーと組みバイオディーゼル燃料の船舶への試験導入を開始した
(出所:ユーグレナ)
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図2 バイオディーゼル燃料はミドリムシと廃食油を組み合わせて製造する
図2 バイオディーゼル燃料はミドリムシと廃食油を組み合わせて製造する
(出所:ユーグレナ)
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 ユーグレナのバイオディーゼル燃料は、微細藻類のミドリムシ(学名:ユーグレナ)と廃食油を組み合わせて製造している。現在は試験航行の段階のため、一般的なディーゼル燃料(軽油)に少量のバイオディーゼル燃料を混ぜて使う。「混合比は非公開」(同社)だが、理論的にはバイオディーゼル燃料100%でもエンジンを問題なく動かせる。試験航行を進めながら適用の拡大を目指す。

硫黄分を含まない

 ユーグレナが同燃料の適用拡大を推進するのは、環境性と汎用性がともに優れているという確固たる自信があるからだ。

 自動車など他のモビリティーと同様に、海運業界でも環境規制の強化が進む。象徴的なのは、国際海事機関(IMO)が2020年1月に開始した硫黄酸化物(SOx)に対する規制の厳格化である。全世界の船舶を対象に燃料油中の硫黄分濃度を従来の3.5%以下から0.5%以下にするよう示したものだ。ユーグレナのバイオディーゼル燃料は硫黄分を含まないため同規制をクリアしやすい。

 また、二酸化炭素(CO2)排出量でも優位性がある。ライフサイクルでCO2排出量を評価する「LCA(Life Cycle Assessment)」で比較すると、一般的な軽油比で同排出量を7~8割減らせる可能性を持つ。IMOは、船舶からの温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに2008年比で50%減らす目標を掲げている。同燃料は目標達成に貢献可能だ。

あらゆるディーゼルエンジンで使用可能

 船舶由来の環境負荷を低減するには、燃費性能に優れる船舶を開発したり、IT(情報技術)で運行管理を効率化したりする手法もある。ただ、バイオディーゼル燃料は軽油で動くあらゆるエンジンにそのまま使える汎用性の高さが強みだ。給油インフラの刷新も必要としない。導入企業は燃料費以外の追加コストを負担しなくてよい。